調査レポート
県産品利用実態アンケート調査にみる製造業振興に向けた課題と提言
( 要 旨 )
・沖縄県の産業構造をみると、第三次産業が突出している一方、製造業をはじめとした第二次産業のウエイトは小さく、県内総生産に占める製造業の割合は4.3%に留まる。また、県内製造業における一人あたり付加価値額は全国の約5割程度の水準となっており、生産性の低さが課題となっている。
・産業連関表から県内製造業の資金循環構造をみると、総供給の約7割を移輸入に依存しており、純移輸出額(移輸出-移輸入)は1兆2,236億円の移輸入超過(赤字)である。加えて、生産工程における資金循環率は60.2%、県外への漏出率は39.8%と試算され、中間投入(原材料)においても県外からの調達割合が大きく、多くの所得が県外へ漏出している状況であることが分かった。
・製造業における自給率および資金循環率の低さは、沖縄経済が「ザル経済」や「漏れバケツ」などと揶揄される所以であり、製造業の発展支援ならびに県産品の優先使用による自給率向上は沖縄経済発展の重要なベースである。
・これらを踏まえ、県内製造業の自給率が1%上昇した場合に県経済へ与える生産誘発効果(経済効果)を測定すると、325億14百万円と試算された。うち生産活動の拡大に伴う粗付加価値額(営業余剰・賃金)は132億62百万円となり、雇用者所得が61億23百万円と推計された。製造業の自給率上昇は製造業事業者のみらならず他の産業への生産誘発効果や県民所得向上への貢献など沖縄経済へもたらす影響は大きい。
・県内主要製造業者へ実施した「県産品利用実態アンケート調査」では、県内製造業の発展にあたり“県産品優先使用”を訴える声が多く、業界における課題として共通認識されていることが分かった。また、経営課題として「仕入価格上昇」、「人手不足」、「諸経費上昇」などが挙がった。ヒアリング調査では、県産品の認知度の低さや他産業との連携強化、電気料金の負担が課題として浮き彫りとなった。
・これらのアンケートおよびヒアリング調査結果や県内製造業に関する分析結果を踏まえ、製造業発展に向けて取り組むべき事項として、①生産性向上に向けた沖縄県と沖縄県工業連合会の連携強化、②一次産業振興のための取り組み強化、③県産品優先使用についての条例制定、④県産品の周知活動強化、⑤工業振興目的税(仮称)創設による電気料金支援、の5項目について提言した。
・いずれの取り組みも県民、事業者、関係団体、自治体が県内製造業の重要性を理解し協働していくことが求められる。本レポートが、県内製造業の重要性について考えるきっかけとなり、製造業の発展、ひいては沖縄県経済の拡大へとつながる一助となることに期待したい。
2024年06月 |
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