Ryugin Research Institute Ltd.

調査レポート

県産品利用実態アンケート調査にみる製造業の実態とOEMの可能性

― 要 旨 ―

•沖縄県では、これまで「沖縄21世紀ビジョン基本計画」等に基づき、製造業の振興に向け取り組んできた。また、「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」においても、自立型経済の実現に向けた施策の一つとして県内自給率の向上ならびに県産品の振興が掲げられている。

•こうした様々な取り組みにも関わらず、県内総生産に占める製造業比率は僅か4.0%と全国の4分の1程度の水準に留まっている。また、製造品出荷額や労働生産性、雇用、自給率などあらゆる指標からみてもその脆弱性は明らかであり、自立型経済の実現を目指す上で大きな障壁となっている。

•このような状況を踏まえ、当研究所では製造業振興に向けた更なる取り組みが必要であるとの問題意識から、2024年6月に県内製造業を対象とした調査を実施し、自給率の向上に向けた提言を取り纏めた。定点的な調査および継続的な問題提起の必要性から、本レポートは第二回目の調査である。

•県内主要製造業60社へ実施した「県産品利用実態アンケート調査」では、原材料調達先が「すべて県外」との回答が約3割を占め、その理由として「県内に調達先がない」、「県外の価格が安い」などが挙げられた。製品の販売先をみると、県外割合が低く、物流コスト等を背景に県外への販路を見いだせていない状況が窺えた。

•経営課題では、「仕入価格上昇(83.3%)」、「諸経費上昇(56.7%)」、「人手不足(56.7%)」が上位に挙がった。製造業という業種柄、他の産業に比べて原材料等の中間投入割合が大きく、また機械への依存度が高いことから、昨今の物価高騰や電気料金高騰による影響が色濃くみられる結果となった。

•アンケートおよびヒアリング調査の結果を踏まえ、製造業振興に向けて取り組むべき事として(1)県産品(地元企業)優先利用に関する条例制定、(2)適切な価格転嫁の実現に向けた取り組み、(3)行政による製造業支援の継続・強化の3項目について提言した。

•また、これらの取り組みに加え、新たな成長分野や成長の機会を探ることも重要であると考え、その戦略の一つとしてOEMにフォーカスし、アンケートおよびヒアリング調査を通して県内のOEMの動向や発展可能性について考察した。

•製造業の発展支援ならびに県産品優先利用による経済循環率向上は沖縄経済の発展を目指す上で重要な位置づけであり、行政、事業者、県民全体の理解と協働が不可欠である。本レポートが、自立型経済の早期実現に向けた一助となることに期待したい。

 

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