Ryugin Research Institute Ltd.

調査レポート

沖縄県内の空港グランドハンドリングの現状と課題 ~現状の那覇空港では24時間稼働は不可能、官民連携によるグランドハンドリング業務の支援が必要~

≪要旨≫

・沖縄県の入域観光客数はコロナ禍の落ち込みを経て急激に増加し、2023年度には2019年度比の約90.1%まで回復した。足元においても国内外からの旺盛な観光需要が継続しており、2024年度は2019年度を超える見通しである。観光客の約9割は空路を利用しており、空港機能が沖縄観光の発展に大きく寄与している。

・沖縄県内の主要空港(那覇空港、新石垣空港、宮古空港)の2023年度の旅客数は、2019年度比で那覇空港は約94.7%、宮古空港は約99.8%まで回復、新石垣空港では約101.5%となり過去最高となった。那覇空港の貨物取扱量は、貨物便の減便やコロナ禍の運休の影響から減少しているものの、2023年度の県内主要空港の国内貨物取扱量はいずれも全国の上位10位以内に入っており、沖縄は空輸の需要が他県と比較して高い水準にある。また那覇空港の2023年度の旅客数は全国6位であり、ターミナルビル1㎡あたりの旅客数は旅客数上位7空港の中で最も高くなり、那覇空港の混雑具合は国内空港の中でも特に高いことが推測される。

・グランドハンドリング業務は、空港において航空機運航の地上支援を行う仕事の総称を指す。国土交通省の公表資料によると、航空業界はコロナ禍の航空需要の減少によりグランドハンドリングを担う従業員の離職が相次ぎ、人材不足が深刻な問題となっている。その背景として、業界のイメージダウンのほか、満足な休憩スペースや更衣室が無いなどの過酷な労働環境がある事が示されている。また人材不足により外国航空等の需要変動リスクへの対応も課題となっている。こうした状況を受け、2023年に「持続的な発展に向けた空港業務の在り方検討会」(国土交通省)や民間事業者による「空港グランドハンドリング協会」が立ち上がり、人材確保等のグランドハンドリングの発展に向けた取組みが行われている。

・県内主要空港においてもコロナ禍にて中堅層の離職があり人材確保が課題となっている。コロナ禍後に新卒採用を強化した結果、2024年4月時点のグランドハンドリングの従業員数は、2019年4月比で約8~9割程度回復したが、20代の若年層が増えていることから人材育成と定着が課題となっている。各空港を視察したところ「執務スペースや休憩室が手狭」「従業員駐車場が足りない」などの過酷な労働環境や様々な空港課題があることを確認した。

・増加する観光需要を受け入れるためにはグランドハンドリングの体制強化が欠かせない。グランドハンドリング従業員の労働環境改善に向け、「官民連携による機動的な協議体制の整備」「補助金等の行政支援の拡充」の2点を提言する。

 

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