Ryugin Research Institute Ltd.

調査レポート

沖縄県のデジタルツイン実現に向けた3D都市モデル整備と活用促進について

<要 旨>

・本レポートは、自治体が保有する地理空間情報の「3D都市モデル化及びオープンデータ化」を求めると共に、沖縄県全体での活用促進を提言するものである。都市経営のEBPM(エビデンスベースでの政策立案)を支え、オープンデータ活用による共創機会の増加で地域DXを促進し、交通整備や防災計画策定など広域連携でのシミュレーション活用など、標準規格で整備された「3D都市モデル」は、あらゆるシーンで活用可能なデジタルデータとして期待される。

・日本は超高齢・少子化が加速し、人口減少による生産力の著しい低下が将来的に懸念されている。対策として「働き方改革」「外国人労働者共生」「ICT活用」などが進められているが、それらの環境整備に共通して求められるのがデジタルデータの活用である。組織や分野ごとに個別最適化したアナログ情報をデジタル化し、機械判読可能なデジタルデータにすることで、業務の自動化や他分野連携を促進する。

・国が進めるSociety5.0は、「現実空間(フィジカル)と仮想空間(サイバー)を高度に融合させた超スマート社会の実現を目指す」とする。「社会のあらゆる要素をデジタルツインとして構築し、制度やビジネスデザイン、都市や地域の整備などの面で再構成した上で、現実空間に反映し社会を変革する(内閣府)」としている。それにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する「人間中心」の社会を目指す。

・「デジタルツイン」は、Society5.0の実現を支える技術のひとつである。現実空間と連動してリアルタイムでデータを取得し、デジタル空間で分析・シミュレーションを行い、その結果を現実空間へフィードバックする。これまで製造業を中心として活用されていた技術だが、世界では都市計画や交通、環境など様々な分野で、デジタルツインの活用が進められている。シンガポールの「バーチャルシンガポール」、オランダの「スマートシティモニター」、韓国の「S-Map」などが代表例である。

・今後必要とされる都市経営では、都市計画をより洗練させ、公共交通の利便性を高め、エネルギー使用を効率的にし、地域医療体制の充実などが求められる。さらに、防災・減災対策、緊急時の避難計画なども必要になる。これらの取り組みは、データに基づいた政策の策定や決定プロセスを経て、住民の合意形成にも努めなければならない。このように難度が高く複雑化した課題を解決していくには、都市の現状をあらゆる角度から可視化できるレイヤー構造(多層)の仕組みが必要となる。

・国土交通省は、2020年度に3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化を進める「Project PLATEAU(以下、プラトー)」をスタートさせた。プロジェクトでは、日本全国の建物や道路を3Dデータで表現し、都市全体をサイバー空間上に再現することを進めている。そこに多様な地域のデータを重ね合わせ、都市全体を多面的・多角的に可視化する「都市のデジタルツイン」を実現し、まちづくりそのものをデジタルトランスフォームすることを目指している。3D都市モデルの整備と活用は、その「最初の一歩」であり、効率的な都市経営を行なっていくための基盤作りと言える。

・まちづくりにおける協調領域では、それぞれの地域で個別最適化せず、相互運用性を備えた「標準化」の設計が求められる。プラトーは、国際標準規格のデータ形式「CityGML」を採用し、2023年度末までに「218地域」の3D都市モデルを整備し、オープン化した。それに連動し、「デジタル田園都市国家構想総合戦略」では、2027年までに「全国500都市の3D都市モデルの整備」を主要KPIとして目標に掲げている。

・県内でも多くの自治体が「デジタル田園都市国家構想」に参加し、スマートシティ構築に向けた取り組みを進めている。それぞれの地域が、テクノロジーを活用して地域の魅力を存分に発揮させるまちづくりを進めることは重要である。加えて、それぞれの地域がシームレスにつながり、全体最適としての「スマートアイランドオキナワ」を目指すことも同じく重要である。その実現には、各自治体がこれまでに整備した地理空間情報を「3D都市モデル」として再整備し、オープンデータとして活用することが望まれる。3D都市モデルは、自治体個別の総合計画だけでなく、広域にまたがる各種計画の策定・実行・検証に有効な地域のデジタルデータとして活用が期待できると共に、民間等の共創によるイノベーション創出も期待できる。

 

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