調査レポート
沖縄県の労働需給問題について ~人手不足は深刻化、労働力確保に向けた公労使一体での取組強化が必要~
≪要旨≫
・沖縄県(以下、本県)では、少子高齢化を背景に生産年齢人口(15歳~64歳の人口)の割合の減少が続いている。人口の減少に伴い今後もこうした傾向は継続すると推計されており、経済活動の維持に向け、労働力不足の深刻化が懸念されている。
・本県の就業者数は増加傾向にあり、中でも65歳以上の高齢者の割合の伸びが顕著であり、労働市場の高齢化が進んでいる。また、若年層(15歳~34歳)の完全失業率や非正規雇用比率は全国と比較して高い状況が続いている。
・本県の有効求人倍率は1倍超となっているものの、若年層を中心とした求職者の減少や高齢求職者の増加を背景に就職率や充足率は緩やかに減少しており、労働需給のミスマッチが生じている。特に「専門的・技術的職業」、「サービスの職業」、「販売の職業」、「建設・採掘の職業」、「輸送・機械運転の職業」において、有効求人が求職を大きく上回る状況が継続しており、慢性的な人手不足となっている。
・こうした労働需給の課題に対して「DXの推進」、「女性の活躍」、「高齢者の活躍」、「外国人材の活躍」、「若年者労働者の活躍」の観点から現状分析と対応策を考察した。「DXの推進」では、実際にDXに取り組んでいる企業(ホテル業、建設業)にヒアリングを実施し、導入事例を整理した。
・次に公共職業訓練校へ視察を実施し、運営状況の現状について確認した。各訓練校の入校状況からは訓練内容と需要のミスマッチが見られ、訓練科の見直し等の課題が見られた。また、雇用・労働環境の改善に向けた沖縄県の2025年度の予算事業(若年者活躍促進事業、沖縄DX推進支援業 等)や沖縄労働局の取組み(SNSを活用した情報発信、専門相談窓口の設置、助成金の推進 等)について整理した。
・次に本県の人手不足対策にかかる官民連携の取組みとなる「人手不足対策アクションプラン」(2024年9月)について確認した。行政や参画する経済団体等へヒアリングを通して現状の進捗状況を確認し、各取組みの具体的な実施や進捗状況を協議する体制の強化等の課題を整理した。
・これらを踏まえ、労働需給のマッチング強化に向けた提言として、「人手不足対策アクションプランの推進体制の強化」、「需要に応じた公共職業訓練の在り方の見直し」、「求人・求職やDX推進にかかる各種支援制度の周知強化」の3点を提言する。