Ryugin Research Institute Ltd.

調査レポート

県内女性の社会進出

<要旨>

➣少子高齢化が進み、労働供給の減少が危惧されている我が国では、労働力を補うため女性の活用に注目が集まっている。政府の成長戦略においても女性の労働力は日本成長への原動力であるとし、女性が働きやすい環境を整えるよう推進しているが、県内では女性が活躍できる社会環境が整っているのだろうか。全国や海外のデータと比較しながら県内女性の社会進出について考察する。

➣県内女性の労働力率は、労働形態がM字型から台形型へと変化しており、全国と比較するとM字のカーブが緩やかである。就業率も2007年以降上昇している。「医療・福祉」「宿泊・飲食サービス業」「情報通信業」といった女性の従事割合が高い職種において雇用の受け皿が整備されたことや20~30代の既婚女性による社会進出が旺盛だったことなどから多くの女性が社会進出を果たした。しかし、その背景には生計維持の目的で社会参加をした女性も多く、低所得県の沖縄では家計を支える女性の労働の役割が大きくなっている。

➣県内の働く女性を取り巻く環境については、6割に上る高い非正規雇用率や全国を下回る勤続年数、所定内給与といった雇用の安定性に乏しい現状がうかがえる。また、子供を産み育てながら就業を選択する環境は、大企業においては整ってきているものの、中小零細企業においてはなお改善が必要で、育児支援制度の整備や再就職支援体制といった就業継続を前提とした雇用環境を築いていかなければならない。

➣家庭環境では、全国、県内ともに性別役割分担意識や子育て期にあたる男性の長時間労働といった理由などから夫の家事・育児参加時間が短く、女性に家事や育児負担が集中する傾向がみられる。性別役割分担意識を取り払い、男性の家事・育児参画を促すことで、女性の社会進出、ひいては少子化問題の緩和にもつながることが期待される。

➣本県では深刻な待機児童問題を抱えており、認可保育所と認可外保育施設によって異なるサービスの質や保育料金などの格差是正、保育士の待遇改善や再就職支援等に基づいた潜在保育士の復帰促進による定着率向上などの施策が求められる。

➣景気の拡大にともない、今後は多くの業種で有能な人材を確保する動きが強まるとみられる。こうした状況のなか、女性の労働力が必要とされ、能力を十分に発揮できる環境が一層求められることとなるだろう。女性の労働市場への参加を喚起し、意欲ある人材が無理なく仕事を続けるためには、ワーク・ライフ・バランスを実現できる環境をハードとソフトの両面から整える必要がある。国や県、企業が一体となり女性のライフステージや地域の実情に応じた施策を展開し、安心して子どもを産み育てるための社会基盤を整えることは、県経済の持続的な成長を支えることにつながる。

 

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