Ryugin Research Institute Ltd.

調査レポート

沖縄県内における介護業界の現状と課題~ 介護は他人事でない時代へ-迫られる質の向上と安定供給への対応 ~

≪ 要 旨 ≫

•2025年、日本の人口構成において大きなウエイトを占める「団塊の世代」 が75歳以上に突入し、医療・介護の需要が急増する「2025年問題」として注目を集めている。また、「団塊ジュニア世代」 が65歳以上に達する2040年には、高齢人口増加の“第二波”が見込まれ、「2040年問題」として課題視されている。

•沖縄県は全国に比べると年少人口割合が高く、高齢人口割合が低いものの、高齢化は着実に進んでおり、2020年に22.6%であった高齢化率は2050年には33.6%にまで上昇する見込みである。また、県内の要介護(要支援)認定者も一貫して増加傾向が続いている。県の推計によると、2023年の約6万3,700人から2040年には9万1,700人まで増加する見込みであり、介護ニーズの更なる高まりが見込まれる。

•そのようななか、足元では介護業界の人材不足が深刻化している。介護職の有効求人倍率(2025年10月)は3.07倍と、3.0倍前後での推移が続いており、介護サービスの質の維持と安定的な供給が重要な課題である。

•その背景の一つに、「介護報酬」に基づく賃金体系が挙げられ、社会全体の賃上げペースに追いつけないことにより生じる賃金格差から、他職種への人材流出が課題である。「きつい」「休めない」などといったイメージもまた、担い手確保の阻害要因となっている。

•介護の担い手確保にあたり、処遇改善や、DXによる生産性向上、介護職員のワークライフバランス向上など、働きやすい職場環境を整備し、職業としての魅力を高める取り組みが求められる。また潜在的な介護人材の掘り起こしなど、他県事例に学びながら、地域の特性に合った行政支援体制を整備していくことも必要である。

•介護業界の現状の課題は将来の生活に直結するものであり、私たち現役世代にとっても看過できるものではない。県民一人ひとりが日頃から健康意識を高く持ち、健康寿命を延ばす努力も介護現場の大きな助けとなるため、県民全体の意識醸成も必要である。

•介護の現場は利用者にとって「生活の拠点」であり、その生活の質を維持していくことは重要である。社会全体で介護業界の課題に向き合い、安定的な介護サービスの維持に向け行政を主体とした多角的なアプローチが望まれる。

 

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