調査レポート
沖縄県内の貸切バス事業の現状について
要旨
○平成12年2月に施行された改正道路運送法により、貸切バス事業において需給調整を前提とした免許制から、輸送の安全等に関する資格要件を確認する許可制への規制緩和が行われた。よって新規参入が容易になり全国的に事業者数が増加している。観光業が盛んな沖縄県において、貸切バス事業(主な使用目的は観光)は重要な産業の一つであることから県内の貸切バス事業に焦点を当て、規制緩和による影響などについて考察する。
○本島の貸切バス事業者数をみると、平成10年度には5社だったが、規制緩和された平成11年度以降、一貫して増加しており、平成20年度には31社と約6倍になっている。規制緩和による影響は宮古や八重山よりも本島において強くみられた。
○本島の1事業者あたりの貸切バス車両数をみると、平成10年度には98台だったが、規制緩和以降は急激に減少し、平成20年度には20台となっている。規制緩和以前は貸切バスと乗合バスを兼業とする大手事業者がほとんどだったが、新規参入した事業者は貸切バスを専業とし、所有車両数が10台前後の小規模事業者が多いため1事業者あたりの車両数の平均を押し下げている。
○本島の1事業者あたりの輸送人員数をみると、平成10年度には985千人だったが、平成20年度には159千人となっている。車両数の少ない小規模事業者が増加したことにより、1事業者あたりの輸送人員の平均を押し下げていると考えられる。本島の1車両あたりの輸送人員数をみると、平成10年度には10,694人だったが、平成20年度には7,816人となっている。
○本島の貸切バス事業者営業収入をみると、客単価に相当する輸送人員数1人あたりの営業収入は緩やかに減少しており、事業者数が増加したことなどにより価格競争が進んだとみられる。1車両あたりの営業収入をみると、規制緩和以降、本島の1車両あたりの営業収入は減少しており、事業者の経営環境は厳しい状況となっている。
○貸切バス事業者の経営環境は特に沖縄県本島において、厳しいものとなっているものの、MICEやスポーツ関連イベント、近年増加傾向にある中国人観光客は団体客が多いことから、貸切バス事業者にとっても需要が見込まれる分野である。よって貸切バス事業者も今後はこれら新しい需要に備えた対策が求められる。
2010年11月 |
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