Ryugin Research Institute Ltd.

調査レポート

県内企業の省エネルギーへの取り組みについて

要旨

○地球温暖化問題は深刻化しており、対策が急がれている。日本は京都議定書において1990年度比6%の温室効果ガスの削減を約束しており、さらには鳩山首相が1990年比で2020年までに25%の削減を目指すと発表している。目標達成のためには省エネルギーへのさらなる取り組みが重要であり、政府の施策効果などにより企業においても様々な省エネルギーへの取り組みが促進されている。

○本レポートにおいては本県のエネルギー消費量の現状を把握したうえで、環境マネジメントシステムや省エネ設備の導入状況、改正省エネ法による県内企業への影響などについて調査し、県内企業の省エネルギーへの取り組みについて考察する。

○どれぐらいの石炭や石油などのエネルギーを消費しているかを表す最終エネルギー消費量は大きく3つの部門に分けられ、「産業部門」(製造業、非製造業)、「民生部門」(家庭、業務他)、「運輸部門」(旅客、貨物)からなっている。沖縄県の最終エネルギー消費量は、1990年度から一貫して増加し2006年度に134,521TJ(テラジュール)となっており、うち民生部門の「業務他」(第三次産業など)の占める割合が最も多い。全国は1990年度から2000年度までは増加傾向にあったが2000年度ごろからほぼ横ばいで推移し2006年度には19,638,208TJとなっており、うち産業部門の「製造業」の占める割合が最も多い。 ○沖縄県の1990年度比の最終エネルギー消費量増加率は53.7%、エネルギー消費に伴い排出される炭素量を表す最終炭素排出量増加率は67.7%、全国はそれぞれ15.8%、11.9%となっており、沖縄県は際立って高い。部門別に全国と比較しても、運輸部門を除く全ての部門において全国よりも高い。特に企業などが該当する産業部門と業務他は全国との差が大きい。

○沖縄県の最終エネルギー消費量増加率・最終炭素排出量増加率が全国よりも高い要因の一つとして産業構造の違いが考えられる。沖縄県は製造業が少なくサービス業を中心とした第三次産業が盛んである。よって第三次産業に該当する業務他が増加していることから最終エネルギー消費量を大きく押し上げている。業務他は、沖縄県、全国ともにオフィスやビルなどの利便性や快適性が向上したことなどによりエネルギー消費量が増加しているが、沖縄県は全国よりも占める割合が多いため、全体への押し上げ効果が大きくなっている。また製造業のエネルギー消費量も、全国は減少しているのに対して沖縄県は増加しており企業規模が小さいことなどからエネルギー効率が悪いことが考えられる。よって炭素排出量の多い石炭火力発電が大部分を占めているという沖縄県のエネルギー供給システムの問題はあるものの、今後、県内企業は省エネルギーへの取り組みを一層強化する必要があると考えられる。

○省エネルギーへの取り組みとして環境マネジメントシステム(ISO14001やエコアクション21など)と省エネ設備の導入などが挙げられる。環境マネジメントシステムの導入状況を、沖縄県の水準をみるために県民総生産が同規模である宮崎県と香川県と比較してみる。沖縄県のISO14001認証取得件数は108件、宮崎県は135件、香川県は146件となっており、沖縄県が少ない。沖縄県のエコアクション21認証取得件数は60件、宮崎県は44件、香川県は11件となっており、逆に沖縄県が多い。沖縄県は、県や市町村がエコアクション21の導入支援などを積極的に行っていることなどから、県内企業にとっては取得しやすいと考えられる。

○省エネ設備の導入に際して税制上の助成措置や政府の補助金など様々な支援制度が受けられる。また省エネ設備を導入する仕組みとしてESCO事業がある。ESCO事業とはESCO事業者が顧客(企業や公共団体等)に対して一定の省エネルギー効果を保証し、その効果(経費削減額)から報酬を受け取るビジネスである。実際に県内でも企業や自治体が省エネ設備を導入することにより大幅な省エネルギーに成功しており、その一部はESCO事業によるものである。環境マネジメントシステムや省エネ設備の導入などの県内件数はまだそれ程多くはないが、件数は徐々に増加傾向にあり、県内企業の省エネルギーへの取り組み意欲は高まっているとみられる。

○企業などの省エネルギーをさらに促進するため「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(省エネ法)が改正され、2010年4月から施行されている。これまで工場・事業場単位だったエネルギー管理義務が企業単位に変わり、企業全体で年間エネルギー使用量が1,500kl(原油換算)を超える場合は特定事業者として指定を受けることになる。1事業場当たりではエネルギー使用量が少ないオフィスやコンビニなども指定対象となることから対象企業が増え、省エネルギー対策が強化されることとなった。

○県内企業においても省エネルギーへの取り組み意欲は高まっており、省エネ法の改正などにより今後ますます取り組みが促進されるとみられる。1社1社が確実に省エネルギーへ取り組むことにより、県全体として大きなエネルギー削減に繋がると考えられる。今後は、自社の使用エネルギーの用途や量などを細かく把握し、無駄がないかどうかをチェックし、自社に適した取り組み内容を検討し効率的な省エネルギーを目指すことがますます重要となってこよう。

 

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