調査レポート
沖縄県における国発注公共工事の経済効果と建設業振興に向けた提言-JV比率の5%見直しにより、経済効果は115億円増加-
≪要旨≫
・沖縄県の県内総生産に占める建設業の割合は11.2%と全国(5.5%)を上回り、建設業は県の産業構造において重要な位置を占めるとともに、県内景気の拡大に大きく寄与してきた。足元では、公共工事、特に国発注の工事が増加傾向にある。
・本レポートでは国発注の公共工事について沖縄総合事務局と沖縄防衛局の発注実績をもとに、県外企業と県内企業それぞれの受注額を算出した。算出にあたり、共同企業体(JV)については、3社JVは最低出資比率20%(出資割合は50:30:20)、2社JVは最低出資比率30%(出資割合は70:30)と仮定した。その結果、2023年度の沖縄総合事務局の工事発注実績は439億42百万円、そのうち県内企業の受注額は233億80百万円(53.2%)、沖縄防衛局の工事発注実績は2,385億28百万円、そのうち県内企業の受注額は916億41百万円(38.4%)と推計された。
・沖縄総合事務局、沖縄防衛局のそれぞれの工事実績の合計をもとに産業連関分析を行い、県内企業が工事を受注することによる県内への経済波及効果を試算した。試算の結果、直接効果は1,148億56百万円、1次間接波及効果は491億9百万円、2次間接波及効果は234億55百万円となり、経済波及効果は1,874億20百万円と試算された。近年、防衛関連工事を中心に公共工事発注額が増加しているが、国発注の公共工事が増加することにより県経済に大きなインパクトをもたらすことが明らかとなった。一方で、金額の大きい大規模工事については県外企業が代表者であるJVが受注することが多く、県内企業の受注割合が小さくなっていることが課題である。
・経済波及効果をさらに高めるためには、県内企業の受注促進が欠かせない。沖縄総合事務局、沖縄防衛局では、分割発注や入札要件の緩和、説明会の実施等によって県内企業の工事参入を促進する取り組みを実施している。また、県外企業が代表者となる工事についても、構成員や下請け企業として県内企業が参画することは、技術力の向上やノウハウの蓄積に繋がり、沖縄県の建設業界の成長の機会となる。
・国発注の公共工事の経済効果拡大のための施策として、(1)最低出資比率の引き上げ、(2)県内企業の受注促進の取り組みの継続と強化、(3)県内建設業の技術力向上とノウハウの蓄積を提言する。国の工事発注額に対する県内企業の受注割合を縮小させる大きな要因となっているJV受注工事の最低出資比率を引き上げることにより、3社JVの3番手に位置することの多い県内企業の受注額の増加を図る。また、沖縄総合事務局、沖縄防衛局には県内企業の受注促進の取り組みを強化すること、県内企業にはそれらの施策を活用し、技術力を高め、県内のみで受注できる工事の幅を広げていくことを期待したい。