Ryugin Research Institute Ltd.

調査レポート

改正建築基準法が沖縄県経済に及ぼす影響

要旨

○沖縄県内において2007年7月以降、新規の建築物の着工が大きく減少している。

○要因は改正建築基準法が施行され、建築確認審査の厳格化や制度の周知不足等の行政側の対応の遅れ、建築確認の審査をする構造建築士の不足、新しい制度に対する設計士の不慣れなどにより、建築確認の許可が大きく遅れていることなどが挙げられる。

○建築着工統計(国土交通省)によると、07年の7~9月の3カ月間の着工床面積は前年同期比52.2%減、着工工事予定額は同56.7%減と大きく減少している。

○当社では、関係者へのヒアリングや7~9月の3カ月間の工事予定額の前年比減少分をもとに県経済に与える影響を年内続いた場合と年度内続いた場合を、県の2000年産業連関表を用いて試算した。

○まず、影響が年内(07年7~12月までの6カ月)続いた場合では、工事予定額は1,099億円のマイナスとなり、経済効果は1,507億円のマイナスの波及効果をもたらす。また、粗付加価値額(名目県内総生産ベース)は968億円となり、これは07年度の県が発表した県内総生産(名目)の見通しの2.5%の額に相当する。

○次に、影響が年度内(07年7月~08年3月までの9カ月)続いた場合では、工事予定額は1,473億円のマイナスとなり、経済効果は2,020億円のマイナスの波及効果をもたらす。また、粗付加価値額(名目県内総生産ベース)は1,298億円となり、同様に07年度の県内総生産(名目)の見通しの3.4%の額に相当する。

○最近は建築着工の遅れによる工事の減少だけでなく、原油高や鋼材など一部の建設資材の高騰も深刻な問題となってきている。今後、これらの問題が、建設会社によっては資金繰りを圧迫し、経営状態の悪化ひいては倒産の発生等につながることが懸念される。

○沖縄県は建築確認審査の緩和措置を法施行後半年間に限り講じているが、事態が沈静化するまで、これらの措置の延長などが求められよう。

 

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