Ryugin Research Institute Ltd.

調査レポート

沖縄県内における2006年プロ野球春季キャンプ の経済効果

要旨

○2006年2月に県内で春季キャンプを実施した国内のプロ野球球団は、前年と同様、日本ハム、広島、中日、横浜、オリックス、ヤクルト、阪神、楽天の8球団であった。1979年に日本ハムファイターズ(現、北海道日本ハムファイターズ)が初めて名護市で投手陣のみのキャンプを実施し、現在、全球団の3分の2が県内でキャンプを実施している。

○キャンプ期間中の見学客数は、球団広報などの公表によると17万1,100人となり、キャンプ後半の天候不順で客足が鈍った前年(13万9,400人)を上回った。また、キャンプ期間中の県外からの滞在者は、当室の試算によると選手、球団関係者が約850人、報道関係者・解説者が約2,300人、県外からの観客が約2万5,100人、合計で約2万8,200人(前年は約2万4,300人)と推測される。

○県外からの滞在者および県民のキャンプ関連支出額(直接支出額)は、総額で約33億3,000万円と推計される。主な内訳をみると、宿泊費が約9億3,300万円で最も大きく、次いで飲食費(約6億6,500万円)、土産品購入(約5億5,700万円)、交通費(約4億200万円)、娯楽レジャー(約3億6,300万円)、練習施設等の整備費(約1億6,100万円)の順となった。前年と比較すると県外からの滞在者や地元見学客の増加により、宿泊、飲食、土産品購入、交通、娯楽レジャー費等が増加し、前年に久米島町の楽天キャンプ誘致に伴う球場改修費で膨らんだ練習施設等の整備費は減少した。

○波及効果を含めた経済効果について、県の産業連関表により試算した結果、生産誘発額はキャンプ関連支出による直接効果も含め、総合効果で約50億4,100万円となり、これがいわゆる県内におけるプロ野球春季キャンプの経済効果となる。キャンプ関連の直接支出額(約33億3,000万円)に対する波及効果は約1.5倍となっている。産業別の生産誘発額は、宿泊業が約9億3,600万円で最も大きく、次いで鉱業・製造業(約6億4,300万円)、飲食店(約5億4,500万円)、商業(約3億8,500万円<商業マージンに相当>)の順となった。

○当室では、前年の春季キャンプの経済効果を約47億9,000万円と試算した。今春のキャンプでは前年の約1.05倍となったが、これは清原、中村選手のオリックス入団や同キャンプに合流したイチロー選手の効果、セ・リーグ優勝の阪神の効果、ヤクルトの古田選手兼任監督の効果などにより来県客が増加したこと、天候が前年より恵まれ地元の見学客も増加したことなどが影響したものとみられる。一方、今回のキャンプでは、トリノ冬季五輪が同時期に開催されたことから来県した報道関係者が前年を下回り、キャンプ地情報のマスコミへの露出度が前年より少なかったことが特徴として挙げられる。

○プロ野球キャンプは、経済効果やPR効果、教育効果が大きいものの、キャンプを定着させるためには受入地の協力会の資金造成やボランティアを含めた人的支援が課題となっている。受入体制を強固にしていくことにより、各球団やマスコミに対して経済効果を高めるような要望や公式戦の県内開催の実現に向けた施策の展開が可能となろう。

 

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