Ryugin Research Institute Ltd.

調査レポート

医師の働き方改革と沖縄県が抱える医療の課題

≪要旨≫

・2024年4月より、働き方改革の一環である「時間外労働の上限規制」の適用対象となる事業・業務が拡充された。そのうちの一業種である医師に関しては地域医療の維持と医師の健康確保の両立を図るため、「医師の働き方改革の新制度」として細かいルールが定められている。

・医師の時間外・休日労働の上限は原則年間960時間、条件を満たした場合は1,860時間が上限となる。他業種のほとんどは年間720時間が上限であり、その2.5倍超の時間外・休日労働が認められている。

・医師本人の健康確保のためのルールとして①勤務間インターバル、②面接指導の実施が設けられている。また、労働時間を正確に把握するため、労働とみなされる業務内容の基準が明確に示された。これらは医師を守る制度であるが、一方で、負担感の増加、研修時間の減少、収入の減少等の懸念点も挙げられる。

・本県の地域医療が抱える課題は山積しているが、例えば供給側の課題として医師の偏在、DXの推進等がある。需要側の課題としては救急医療の「コンビニ受診」、健康意識の低さ等がある。少子高齢化により医療ニーズは今後益々高まると予想され、課題への対応が急がれる。

・地域医療を守るためには、県民意識の醸成と一人ひとりの行動改善が欠かせない。適正な救急利用や平日の来院等を心掛けることによって医師の働き方改革を促し、必要な時に必要な医療が安心して受けられる沖縄を維持するべく、県民全員が健康意識を高く持つことが望まれる。加えて、定期的な実態調査を行い、医師の声を反映させた制度の改良を続けていくことが必要である。

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