調査レポート
久米島における楽天キャンプの経済効果およびマスコミによるPR効果について
要旨
○半世紀ぶりに誕生した新球団の「東北楽天ゴールデンイーグルス」が、2005年2月の初のキャンプ地として沖縄の久米島町を選んだことから、この小さな島はキャンプ期間中、大勢の来島者によって賑わい、またマスコミのキャンプ地情報の発信による久米島の知名度アップに伴い、今後の観光客の増加や地場産品の取引拡大などが期待される。
○キャンプ期間中の地元町民を含むキャンプ見学客数は、概ね6,500人であった。一方、キャンプ期間中における島外からの滞在者としては、選手、球団関係者のほかに、報道関係者や解説者、県外や沖縄本島等からの観客(ファン等)、行政・観光関連の視察者等が挙げられるが、このキャンプ期間中の滞在者の総数は、概ね900人(日帰り客を含む)と推計される。
○春季キャンプ関連の直接支出額は、キャンプ関連の滞在者および地元受入地の消費的直接支出額が概ね1億3,600万円と推計される。主な内訳は、宿泊・飲食が約7,000万円、交通費が約2,800万円、その他が約3,800万円となった。また、地元の建設投資として、球場改修等の工事があり、概ね2億4,000万円が予算措置された。これらを合わせた約3億7,600万円が直接支出額となる。
○こうした直接支出額が原材料の調達や従業員の所得増加に伴う消費の増加により関連産業の生産を拡大させていく波及効果については、「産業連関表」を用いて算出してみた。試算の結果、波及効果を含む経済効果(総合効果)は概ね6億3,000万円と推計された。参考までに球場改修費を除いた場合の経済効果(総合効果)を試算すると、概ね2億2,600万円となった。
○PR効果については、新聞、テレビで「久米島」と「楽天」の両方が掲載された記事と写真の面積およびテレビ番組の放映時間を広告費に換算し、その金額をPR効果とみなした。試算の結果、これらマスコミによるPR効果は概ね27億円と推計される。もっとも、新聞、テレビ以外の媒体まで含めると、PR効果はさらに大きくなる。
○キャンプ期間中のマスコミのPR効果により、久米島における今後の入域観光客数の増加が期待できる。ちなみに、「久米島」と似たようなケースで取り上げられた事例として、ワールドカップのカメルーン代表チームのキャンプ地となった大分県中津江村がある。その年における中津江村の観光客数の伸び率(前年比27.6%増)を単純に久米島に適用すると、久米島の04年の入域観光客数が9万5,000人であったことから、約2万6,000人程度の増加が期待できる。また、久米島の地域や特産品等が、マスコミで取り上げられたことによるPR効果やキャンプ後の東北地方との交流拡大などにより、今後、特産品等の販路拡大が期待でき、既にこうした動きがみられる。
○久米島は、冬場の観光振興が大きな課題となっており、楽天キャンプが今後も継続して実施されれば、冬場の大きな観光資源となることが期待できる。そのためには、キャンプ定着のための受入体制づくりや、経済効果を高めるような観光資源の開発、新たな観光関連施設の整備等も検討していく必要があろう。