Ryugin Research Institute Ltd.

調査レポート

建設業の現状と今後の展望に関するアンケート調査結果

要約

○自社の経営上の強みでは、「技術力」や「人材」、「営業力」を挙げる企業が多かった。
⇒特徴としては、元請工事の比率が高い企業で「営業力」を挙げる割合が高かった。一方、建設業以外の兼業部門のある企業で「兼業部門」を経営上の強みとして挙げたのは4割弱に止まった。

○県内建設市場規模の今後5年間の見通しでは、8割以上の企業が公共工事の減少を見込んでおり、公共・民間工事をあわせた建設市場全体の見込みについても6割を超える企業が減少を見込んでいる。

○自社受注額の今後5年間の見通しでは、公共工事で6割超、全体では7割超の企業が増加あるいは横ばいを見込んでおり、建設市場規模の見通しとは対照的な結果となった。
⇒特徴としては、民間工事を主体とする企業において受注額の増加を見込む割合が高かった。

○建設業部門の利益を確保していくために取組んでいることや今後取組みが可能なことでは、「営業力の強化」や「技術開発力の強化」、「人件費の圧縮」、「資金繰り管理の強化」、「仕入れコストの削減」などを挙げる企業が多かった。
⇒特徴としては、公共工事や土木工事を主体とする企業で「人件費の圧縮」を挙げる割合が高く、逆に、民間工事の比率の高い企業では「人件費の圧縮」の割合は低かった。また、完工高下位や下請工事主体の企業で「資金繰り管理の強化」の割合が高かった。

○今後5年間程度の建設業部門での利益水準の見込みでは、7割超の企業が維持または拡大できるとしている。
⇒特徴としては、民間工事の比率の高い企業や建築が主な業種の企業において利益の維持・拡大を見込む割合が高かった。

○建設業の事業分野の今後の方針では、継続または強化が9割超と大半を占めた。また、兼業部門の今後の方針では、継続または強化が同じく9割超となった。

○現在の建設業部門とは別の新たな建設市場分野への取組みでは、4分の1の企業が具体的に計画中か既に事業として取組んでいるのに対し「取組んでいないし今後も取組む予定がない」企業も3割を超えた。具体的な分野としては、リフォーム市場への参入や現在主力としている業種以外の建設業分野への進出、提案型住宅建築、米軍基地内工事、屋上緑化などが多かった。
⇒特徴としては、公共工事主体の企業で「取組んでないし今後も取組む予定はない」の割合が高く、逆に民間工事主体の企業では低かった。また、元請工事主体の企業や資本金4千万円以上の企業、完工高上位企業、建築工事主体の企業で、「既に事業として取組んでいる」「具体的に計画している」の割合が高い。さらに、別の新たな建設市場分野へ取組み中の企業(「既に事業として取組んでいる」と「具体的に計画している」の合計)では、将来の受注額の増加を見込む割合が高かった。

○建設業以外の新分野への進出については、具体的に計画中か既に事業として取組んでいる企業は2割弱で「取組んでいないし今後も取組む予定がない」企業が半数近くを占めた。
⇒新分野の具体例としては、環境リサイクルや不動産分野、建設関連分野などがあった。公共工事主体の企業では健康食品や農林水産分野への進出が多く、民間主体では建設関連や不動産分野への進出が多かった。
⇒特徴としては、下請工事主体の企業や資本金が1千万円以下の企業、完工高下位の企業で「取組んでないし今後も取組む予定はない」の割合が高かった。

○取組んでないし今後も取組む予定のない企業についてその理由では、「建設業の維持強化が重要」が最も多く、次いで「他分野でも競争はあり厳しい」、「投資リスクが大きい」などの順となった。
⇒特徴としては、完工高下位企業で、進出しない理由として「資金面」の割合が高い。

○新分野進出の際に重要な事項は、「新分野の市場有望性等に関する情報」や「ノウハウの取得」、「資金の造成」、「現雇用者の教育訓練・研修」などが多かった。
⇒特徴としては、完工高上位企業で「資金の造成」の割合が低かった。

○行政に対して建設業への施策として要望することでは、「地元業者への優先発注」、「格付けにおける経営事項審査制度の見直し」、「市町村発注の工事量の確保」の順となった。
⇒特徴としては、完工高下位、資本金下位企業で「市町村発注工事量の確保」の割合が高かった。

○新分野へ進出する際に行政へ支援策として要望することでは、「新たな事業分野へ進出するための助成金、融資等」、「新たな事業分野に関する情報提供」、「支援のための常設窓口の設置」の順となった。
⇒特徴としては、公共工事主体の企業で「支援のための常設窓口の設置」に対する要望が強かった。  

○金融機関への要望等では、「主要プロジェクト等の情報提供」、「取引先の紹介」、「経営診断」の順となった。
⇒特徴としては、建築工事主体企業で「取引先の紹介」に対するニーズが高く、逆に公共主体企業では低かった。また、完工高上位企業で「遊休不動産有効活用・売却の支援」への要望が強く、資本金下位で「主要プロジェクト等の情報提供」に対するニーズが低かった。

○自由意見では、「行政に対する要望」、「建設業を取り巻く状況について」、「自社の今後の方向性」、「金融機関への要望」などがあった。
⇒具体的には、①行政に対する要望では、公共工事量の確保や地元優先発注、格付けにおける経営事項審査制度の見直し、ゼネコン偏重の発注方法の見直しなどが多かった。②建設業を取り巻く状況では、公共工事の削減により建設業界の競争が激化している状況についての記述が多くみられた。③自社の今後の方向性では、建設業界の環境変化に対応するべく民間工事への対応や新技術開発強化などに注力することなどの方向性がみられた。また、業界内の再編・淘汰は不可避である、という認識が多かった。④金融機関への要望では、プロジェクトなどの情報提供や融資審査の緩和・迅速化、(担保・保証に過度に頼らず)企業の将来性、技術力などを評価する融資などへの要望が多くみられた。

 

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