Ryugin Research Institute Ltd.

調査レポート

2023年度の沖縄県経済の動向

(1)概況

 2023年度の県内景気は、消費関連は、新型コロナの影響が大幅に和らいだことを背景に消費マインドが高まり、回復の動きが鮮明となった。建設関連は、資材価格が高止まりしているものの、民間工事の再開の動きが強まり、回復の動きが明確となった。観光関連は、旺盛な旅行需要を受け、緩やかな拡大の動きとなった。全体では、緩やかな拡大の動きとなった。

 個人消費は、物価上昇下にありながらも、2023年5月に新型コロナの法的な位置づけが5類に移行された後のペントアップ需要や観光需要が高く、回復の動きが鮮明となった。百貨店売上高は、前年度を上回った。スーパー売上高は、年度を通して好調な推移となり、既存店・全店ともに前年度を上回った。耐久消費財では、新車販売台数は、半導体不足等による供給制約が和らいだことなどから前年度を上回った。家電大型専門店販売額は、単価上昇などにより前年度を上回った。

 建設関連は、回復の動きが明確となった。公共工事では、沖縄振興予算が前年度を下回ったものの、国や県、市町村発注の工事が増加したことから前年度を上回った。民間工事では、貸家、分譲などの新設住宅着工の増加や、前年度に続きホテルなどの受注がみられ、建設受注額は前年度を上回った。建設資材関連では資材価格が高止まりで推移しており、鋼材や木材の売上高は前年度を上回った。

 観光関連は、緩やかな拡大の動きとなった。新型コロナ5類移行後に各種規制が撤廃されるなか、全国旅行支援等の需要喚起策や修学旅行などの回復等を受けて、国内客は前年度比3年連続で増加した。また外国客も、国際航空路線やクルーズ船の就航が段階的に再開され、回復が顕著となった。県内主要ホテルは、稼働率、売上高、宿泊収入、客室単価全て前年度を上回った。主要観光施設入場者数も前年度を上回った。ゴルフ場は入場者数が前年度を下回ったものの、売上高は前年度を上回った。

(2)個人消費

 個人消費は、回復の動きが鮮明となった。
 個人消費は、物価上昇下にありながらも、新型コロナ5類移行後のペントアップ需要や観光需要にけん引され、好調に推移した。
 百貨店売上高は、前年度比7.1%増となった。外出機会の増加に伴い人流が回復するなか、各種催事企画ではコロナ禍以前のような活況さがみられた。また、コロナ禍で消失したインバウンド客の回復に伴い免税売上が増加し、全体の売上増加に寄与した。スーパー売上高は、既存店ベースでは同6.0%増、全店ベースでは同6.6%増となった。値上げによる単価上昇に加え、人が集まる機会の増加や各種イベントの再開、観光需要の回復などが追い風となり、年度を通して好調に推移した。
 耐久消費財では、新車販売台数は、同3.2%増となった。半導体不足等による供給制約が和らぎ、新車の供給体制に改善がみられたものの、年度の後半にかけては一部自動車メーカーによる新車の生産・出荷停止が下押し要因となり、増加幅が縮小した。家電大型専門店販売額(速報値)は、同1.7%増となった。年度を通して巣ごもり需要の反動がみられたものの、単価上昇などにより前年度を上回った。

(3)建設関連

 建設関連は、回復の動きが明確となった。
 公共工事請負金額は、前年度比13.5%増となった。沖縄振興予算は前年度より減少したものの、前年度に続き、港湾や防衛関連、道路工事に加えて、学校関連工事などが多くみられた。発注者別にみると、国、県、市町村は前年度を上回ったが、独立行政法人等・その他は下回った。
 建築着工床面積は、同8.2%減となり、居住用は増加したが非居住用は減少した。
 新設住宅着工戸数は、10,007戸(同5.6%増)となった。貸家は同11.5%増となり、7年ぶりの増加となった。分譲も前年度に引き続き増加傾向が見られたが、持家は2年連続で減少となった。利用関係別にみると、貸家、給与、分譲は前年度を上回り、持家は下回った。
 建築受注額は、公共工事、民間工事ともに増加し、同30.6%増となった。建築単価の上昇に加え、前年度に続き、ホテルや分譲マンションなどの受注がみられた。
 建設資材関連は、セメント出荷量は公共工事向けが増加したことなどから同1.3%増となり、生コン出荷量は同1.3%減となった。鋼材売上高は鋼材価格が高止まりで推移していることなどから同18.2%増となり、木材売上高も同0.6%増とともに前年度を上回った。

(4)観光関連

 観光関連は、緩やかな拡大の動きとなった。
 2023年5月に新型コロナ感染症の法的な位置づけが5類に移行されたことで各種規制が撤廃され、県内のイベントが通常開催されたほか、旺盛な旅行需要に対して全国旅行支援策等などの後押しもあり、入域観光客数は前年度を超え、主要ホテルの稼働状況も前年度を上回り、好調に推移した。
 入域観光客数は、年度全体では前年度比25.9%増の853万2,200人となり、3年連続で前年度を上回り、コロナ禍以前で過去最高を記録した2018年度の85.3%まで回復した。国内客は同10.6%増の726万9,100人となり、2018年度を上回り過去最高となった。また外国客は同531.4%増の531万2,000人となり、2018年度の26.0%まで回復した。
 県内主要ホテルは、稼働率は56.8%と同4.2%ポイント上昇した。売上高は同17.7%増となり、宿泊収入は同19.3%増、宿泊単価は同10.6%増となった。那覇市内ホテルは、稼働率は58.4%と同3.6%ポイント上昇し、売上高、宿泊収入、客室単価は前年度を上回った。リゾートホテルは、稼働率は56.2%と同4.4%ポイント上昇し、売上高、宿泊収入、客室単価は前年度を上回った。
 主要観光施設入場者数は同36.8%増となった。ゴルフ場入場者数は、県内客が減少、県外客は増加し同2.4%減となった。一方で売上高は同3.5%増となった。

(5)その他

 雇用情勢をみると、就業者数は、運輸業・郵便業、建設業などで減少したものの、生活関連サービス業・娯楽業、宿泊業・飲食サービス業、製造業などで増加した。失業率は3.2%と前年度と同水準となった。新規求人数は同2.9%増となり、有効求人倍率は1.17倍と前年度を上回った。
 企業倒産は43件で前年度を11件上回った。業種別では、サービス業17件(同5件増)、建設業が8件(同4件増)、卸売業5件(同2件増)などとなった。負債総額は33億8,100万円で同10.5%増となり、大型倒産(負債総額10億円以上)は発生がなく、大口倒産(同1億円以上10億円未満)は12件(同3件増)となった。
 消費者物価(総合)は、家具・家事、食料、被服・履物などの費目で上昇したことなどから、前年度比3.8%の上昇となった。

 

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