Ryugin Research Institute Ltd.

調査レポート

沖縄県内におけるプロ野球春季キャンプの経済効果

要旨

○沖縄県内でのプロ野球春季キャンプは、1979年に日本ハムが実施したのが初めてであるが、この03年には阪神が加わり12球団中、7球団(日本ハム、広島、中日、横浜、オリックス、ヤクルト、阪神)が県内でキャンプを実施している。

○キャンプ期間中の県外からの滞在者は、当部の推計によると、選手、球団関係者が約7百人、報道関係者・解説者が約1千8百人、県外からの観客が約1万1千5百人、合計で約1万4千人と見込まれる。

○県外からの滞在者および県民のキャンプ関連支出額(直接支出額)は、総額で約21億4千万円と推計される。主な内訳は、宿泊費が約5億4千万円、次いで飲食費(約4億7千万円)、土産品購入(約3億3千万円)、娯楽レジャー(約2億4千万円)、交通費(約2億3千万円)等であった。また、キャンプならではの支出では施設等整備費が約1億円、次いでクリーニング代(約5千万円)、アルバイト要員への支払い(3千万円)、施設の使用料(2千万円)等であった。

○このようなキャンプ関連の支出は、宿泊、飲食、運輸業等の産業だけでなく、これらの産業に原材料・サービス等を提供している関連産業の売上増加や雇用者所得の増加による消費の増加を通して、次々に他の関連産業に波及していく。

○この波及効果も含めた経済効果については、県の95年産業連関表を用いて試算した。産業連関表については、当部で本調査の分析用に県の90部門表を52部門に組み替え、かつ一部観光関連産業の自給率を設定し直した上で用いた。

○この産業連関表により経済効果を試算した結果、生産誘発額はキャンプ関連支出による直接効果も含め、総合効果で約32億1千万円となり、これがいわゆる県内におけるプロ野球春季キャンプの経済効果となる。キャンプ関連の直接支出額(約21億4千万円)に対する波及効果は約1.5倍となっている。産業別の生産誘発額は、宿泊業が約5億4千万円、次いで鉱業・製造業(約4億万円)、飲食店(約3億8千万円)、娯楽サービス業(約3億3千万円)等であった。

○当部では、2000年2月に当時6球団のキャンプの経済効果を約11億3千万円と試算した。今回の試算結果は約3倍となっているが、これは阪神が加わった影響のほか、他球団の経済効果も高まったこと、調査範囲を拡大したこと(県民の消費支出やキャンプ地の経費支出、オープン戦入場券売上等)、使用した産業連関表が前回と異なること等も影響しているため、前回の試算結果と単純に比較することはできず、その差が全て阪神効果ではないことに留意されたい。

○今後、経済効果を高めるためには、マスコミの積極的活用やキャンプ地での消費拡大の仕掛けづくり、本拠地球場での特産品販売やファンクラブとの交流拡大など地道な取り組みが必要であり、また、キャンプを定着させるためには組織的な支援・応援体制の強化も必要である。中長期的な課題としては、公式戦が可能な球場の建設やスポーツコンベンション関連人材の養成等が挙げられる。

 

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