Ryugin Research Institute Ltd.

調査レポート

沖縄県の高齢者住宅の現状と課題について

要旨

○高齢者住宅の県内における開設状況をみると、介護保険制度により介護保険給付の対象となったグループホーム(痴呆対応型共同生活介護)については順調に増加しているものの、有料老人ホームはグループホーム同様に民間業者が開設できるにもかかわらず、ここ数年来全く開設されていない。

○その理由としては、本県においては、①すでに介護保険3施設(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設)の整備が他府県に比べ格段にすすんでいること、②高齢者の所得水準が相対的に低いため、介護保険施設より自己負担額の大きい高齢者住宅が敬遠されていることなど、があげられる。

○一方、①介護保険施設には入所待機者があること、②高齢者数が増加するにつれ、今後介護の必要なお年寄りが増えるとみられること、③入院基本料の特定療養費化により医療保険療養病床等の社会的入院患者の受け皿施設が必要になること、などから今後も介護保険施設に対するニーズは衰えることはないものとみられる。

○しかし、介護保険3施設は既に県の介護保険支援事業計画を充足しており、さらには介護保険料が高騰していることから、新規の開設は困難とみられる。よって、県内においては、おもに療養病床を持つ医療法人や社会福祉法人、あるいは医療・福祉複合体が施設に対するニーズに対応していくものと予想される。これらの医療機関は今後有料老人ホームを開設し、特定施設入所者生活介護の指定を受けて介護サービスを提供していくものと思われる。

○有料老人ホームの設置・運営に関する国のガイドラインである有料老人ホーム設置運営標準指針が2002年4月に改正された(同年10月施行)。指針改定には無届施設に対する行政サイドの指導強化の目的もあるため、今後は無届を前提とした高齢者住宅開設は再考を迫られることになると思われる。一方、既存の高齢者住宅で施設基準が一部クリアできない等の理由で有料老人ホームとしての届出が受理されていないケースについては、提供している事業の内容等が適切と判断されれば、県は届出を受理する方向で指針を弾力的に運用することが望まれている。

 

このページのトップへ