Ryugin Research Institute Ltd.

調査レポート

県内環境アセスメント関連業の現状と課題

要旨

○亜熱帯海洋性の気候に属する沖縄は、島嶼性、種の多様性も相まって世界的にも貴重な自然環境を有している。環境の保全はある意味では最重要な課題といっても過言ではない。そのような中で環境アセスメントという語を目にする機会が増えてきた。環境アセスメントがどのようなものであるのか、制度を概観するとともに環境アセスメントに係る県内業者の現状と課題についてまとめてみた。

○環境アセスメント(環境影響評価)とは、環境に大きな影響を及ぼす恐れのある開発事業について開発実施の事前に調査、予測、評価をして対策を講じることにより環境への影響を回避、縮小していくことをいう。現在、国の環境アセスメント法および地方自治体の環境影響評価条例に基づき制度が確立、運用されている。環境アセスメントの業務は、これらの制度の中で、事業主体(事業者)からの依頼により、環境アセスメントの企画コンサルティング、調査、解析、予測、評価、保全対策の立案を行い事業主体と事業の許可組織の間に入って調整し報告書を取りまとめることである。

○環境アセスメント業務に係る業種(本稿では、便宜上環境アセスメント関連業と表示する)の代表的なものとして、建設コンサルタント業と環境計量証明業が挙げられる。建設コンサルタント業は建設事業の中で施工を除く全ての業務に係っているが、時代の要請とともに重視されてきた環境アセスメント業務に携わっている。環境計量証明業は公害規制を背景に誕生してきた環境測定分析・証明を専門とする業種であるが、分析業務を生かして環境アセスメントの業務に携わってきている。報告書の取りまとめ等中心的な役割を担っているのは技術士、RCCM、環境計量士等の技術者である。

○県内の環境アセスメントに係る業者は少ない。要因として、県の条例に基づくアセスメントの施行が間もないことが挙げられる(平成13年11月施行。それ以前は行政指導であった)。また、環境計量証明事業所そのものが少ない要因として、本県は製造業が少なく、他府県と比較して公害問題が少なかったことが挙げられる。

○本土系企業の参入も見られるが本土系企業の場合、大手建設コンサルタント業者が環境分析部門や環境調査部門を備えることで環境計量業を兼業している傾向にある。県内においては、環境計量証明業が建設コンサルタント登録をすることにより兼業しアセスメント業務を受注しているケースが多い。また、民間企業からの受注が少なく、公務からの受注が多いため、契約方式も指名競争入札が一般的である。現在、国主導でプロポーザル(技術提案)方式が導入されつつある。環境計量証明業の企業形態は、県内も公益法人と民間の営利法人からなっており、公益法人は分析能力に優れ、民間の営利法人の中でも大手系は親会社の力があるが、概して独立系は営業基盤が弱い。

○環境アセスメント関連業の課題と対応策として、人材の育成のためには、関連団体への加盟等による人材育成機会の創出、情報収集のための本土系同業他企業との交流機会の拡大が考えられる。大学院大学に環境問題を研究対象とする分野を設置し専門家の育成につなげることも期待できる。中立性の維持(信頼性の確保)のためには、方法書作成段階におけるアセスメントの調査項目や調査方法の選定いわゆるスコーピング(しぼり込み)の手続きを重視することも重要となる。住民との意見交換をこれまで以上に重要視すべきである。また、住民側のサポートとして行政による環境NGOの育成も重要である。営業基盤の強化のためには、地元同業他社との業務提携等、業態全体で収益をあげる仕組みづくりも必要である。さらに地域特性調査を地元業者で請負う体制づくりが行政へ求められる。環境アセスの進捗状況に対応した資金調達として、公務からの受注に対して、完成払い分を担保見返りとした貸し付けの制度化を要望したい。

○環境アセスメント法、および沖縄県の環境影響評価条例に基づく制度の概要をまとめた。

○今後、本県においても環境アセスメントはさらに重要となる。沖縄県の場合、特に基地や開放後の基地跡地の土壌汚染の問題がある。普天間基地等の大規模基地が開放された後の再開発には事前の環境アセスが欠かせない。また自然環境に恵まれているがゆえの環境保全のためのアセスの必要性も高い。さらに、県による戦略的アセスメント導入への動きや沖縄振興特別措置法(新沖振法)での環境保全の方向づけもある。今後、国や自治体による企業選定もシビアなものとなり、各事業所では人材の確保が急務となってくるであろう。

 

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