Ryugin Research Institute Ltd.

調査レポート

介護保険制度導入後の県内介護保険施設の動向(事業者アンケート結果を踏まえて)

要旨

○本レポートは県内介護保険施設が介護保険制度1年目をどのように乗り切り、また制度導入後どのような課題を抱えているのかを探ろうと試みたものである。

○介護保険制度導入後の入所者数の増減をみると、介護保険3施設(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設)はもともと満床近い施設が多かったことから入所者数の伸びは限られた。3施設全体で入所者数が「変わらない」とした割合は69.7%であった。一方、「入所待機者がある」と回答した施設が全体の80.8%、さらに「待機者数が増えた」施設は40.8%となっており、施設に対する県民のニーズの高さが窺われた。

○全国調査では介護保険導入の結果、「在宅介護」重視を謳った制度の理念とは逆行するかたちで施設志向が強まったことが報告されているが、当県でも入所者数や待機者数の動向からすると、特に介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)と介護老人保健施設に利用者のニーズが高まる傾向がみられた。このことは平成12年度の介護保険費給付額が県の見込みを大幅に上回り市町村の介護保険財政を圧迫する要因ともなっており、今後に課題を残すこととなった。

○入所者の平均入所期間については、施設全体では「変わらず」が77.3%となったが、3施設ごとにみると老健施設で57.9%が「長期化した」と回答しており、全国と同様に本県でも老健施設で入所期間の長期化、「特養化」の傾向がみてとれた。

○介護保険施設が提供する居宅サービスについては施設全体で44.7%が提供サービスの種類または提供量を増やしている。

○施設収入は3施設全体の57.9%が介護保険導入後に「収入が増加した」と回答しており、介護保険制度は介護保険施設にとって追い風となったことが分かる。収入増の理由としては「介護報酬の増加」が一番多かった。ただ施設ごとにみると介護保険制度の導入は特養ホームと老健施設には大きなメリットをもたらしたものの療養型では施設ごとに明暗がはっきりと分かれた。

○介護療養型医療施設では介護指定が必ずしも施設全体の収入増につながらず、実際に一部の施設では介護保険指定を返上し医療保険に一本化する動きも出ている。特に収入の減少した療養型医療施設においては今後の医療報酬改定などを睨みながら難しい選択を迫られることになろう。

○介護保険施設運営上の当面の課題としては、3つの施設において「従業者の確保」(59.0%)と「経費削減」(41.0%)を挙げる割合が多かった。特に特養ホームにおいて「従業者の確保」を挙げる施設が70.8%に上るなど、人手不足がかなり問題になっており、ヘルパーやケアマネジャー、理学療法士・作業療法士といった介護関連分野の専門的人材の育成が急がれていることが浮き彫りになった。

 

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