Ryugin Research Institute Ltd.

調査レポート

沖縄県の労働需給問題について ―若年失業者対策を中心に考える―

〈要旨〉

 県内の多くの産業で人手不足が深刻化しており、企業のなかには人手不足を理由に経済活動を制限せざるを得ない状況が散見される。しかし、県全体でみると、働き手は増加していることから人材がより流動的になっていると考えることが適当である。

 現在、取り組まれている人手不足への主な対応策について確認した。

 DXの導入事例では、ヒアリングをした企業の取り組みから整理した。ここからDX担当者に求められることとしては、企業の経営課題への理解と、実務を細かく把握し、これらを踏まえてDXで何を優先的に改善していくべきか明らかにすることであると考えられた。

 女性活躍の状況では、沖縄は全国と比べて労働力率が高く、男女間の賃金格差が小さいことがわかった。しかし、就労条件において沖縄は男女ともに全国と比べて劣後している。女性活躍を推進する上では人手不足対策とあわせて就労条件の改善を図ることが期待される。

 高齢者活躍の状況では、求職者数をみると35歳未満の求職者が最も多いことに変わりはないが、ここ数年、求職者全体に占める高齢者の割合が増加している。これを受け、すでに先進的な企業では、様々な角度から高齢者の活躍に向けた動きが検討されはじめている。

 外国人材の活躍では、外国人労働者は増加傾向にあり、様々な産業で活躍がみられている。沖縄経済の重要な担い手として、官民連携した取り組みが求められる。

 若年労働者の活躍では、2022年の15~29歳の完全失業率で、沖縄は6.0%(全国:4.1%)となり、全国で最も厳しい結果となっている。若年者の失業への対応策として、2つのアプローチから考える。フローへの対応では、沖縄は全国と比べ、卒業後に同じ職場で働き続ける人が少ない傾向にあることがわかった。なかでも、高卒の離職者が増えている要因として、企業の採用時期の遅さがあげられており、改善が求められる。続いて、ストックへの対応では、離職者向け公共職業訓練の状況についてみた。職業能力開発校では、スキルを高め、専門性を取得する機会が提供されるが、労働意欲があるハローワーク求職者の誰もがそうした機会に恵まれるわけではなく、また、入校者の多くを男性が占め、偏りがあることがわかった。基本的には、すべての労働意欲のある応募者に対し、職業訓練機会の確保を図ることが望ましく、また、女性の就業促進を図るうえでは、訓練科の見直しを含め、女性が入校しやすい環境の整備が求められる。これらを背景とし、イ)経済の実情に合わせた訓練科の見直し、ロ)応募者が全員入校できるよう予算措置の拡大、ハ)雇用のセーフティネット機能の充実・強化、二)周知活動の強化、の4点について提言した。

 人手不足の問題は、一朝一夕で解決できるものではなく、社会全体での有効な人材活用がこれまで以上に求められることとなる。「誰一人取り残さない」社会の実現のためには、官民が連携して人への投資を増大させていく必要があり、あらゆる施策を総動員すべきである。とりわけ、他に比べて遅れている若年失業者対策を強化することが求められる。

 

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