Ryugin Research Institute Ltd.

調査レポート

IT革命と県内企業の意識動向について~企業アンケート調査の結果をふまえて~

要旨

○社内におけるLAN(ローカル・エリア・ネットワーク:企業などある限定された範囲に敷設されたコンピューター通信のためのネットワーク)の構築状況は、「構築している」と答えた企業の割合が61.8%で、県内企業においてもLANの活用が広がっていることが解かる。

○LANを構築していると答えた企業(68社)に対して、その構築時期を質問したところ、約半数以上の企業が2年以上前にすでにLANを構築しており、県内企業における社内ネットワークへの関心度の高さがうかがわれる。全国的にも、企業におけるLANの利用度が高まっており、本県でもこの増加傾向が続くと思われる。

○県内でも約8割の企業が、インターネットを何らかのかたちで活用しており、この結果が示すものは、企業活動におけるインターネットの重要性が認知されていることに他ならない。

○ インターネットを活用していると答えた企業(89社)に対して、その活用の主な目的を質問したところ、「情報収集」(57.1%)と答えた企業が一番多く、その次に「BtoB(企業と企業の取引、企業間情報のやり取りを含む)」(24.1%)、「BtoC(企業と消費者の取引)」(12.5%)、「その他」(6.3%)の順となっている。

○インターネットのホームページについては、県内企業の約6割が開設しており、BtoCや情報発信などによる自社の新たな販路拡大やPRを行っている様子を垣間見ることができよう。いわゆる、こうした県内企業の動きは、最近の大きなトレンドであるインターネットコマース市場への期待度の高さを示唆する結果となっている。

○一方、ホームページを「開設していない」と答えた企業(37社)に対して、今後のホームページの開設予定を質問したところ、「予定している」と答えた企業の割合が6割弱を占めている。世界的にIT化が急速に進展するなか、県内においても、現状よりステップアップしたインターネットの活用法を模索している企業が増えつつあることを確認することができる。

○情報化推進のための専担者や技術者の確保について質問したところ、「いる」と答えた企業の割合が44.5%で、さほど高くない水準といえる。今後、県内企業がIT化を推進していくうえで大切なのは、当分野の人材育成・確保は企業戦略上優先されるべく事項であるとの認識を持つことであろう。

○今年度の設備投資総額に対する情報化投資(コンピューター・パソコン等の購入、LAN・インターネット等のシステム構築、ソフトウェアの開発・購入等を指す)の割合については、約8割の企業が10%未満と答えており、水準的には必ずしも高いとはいえない。

○情報化投資の割合の対前年度比較についての質問では、「増加している」と答えた企業の割合が4割強と最も多くなっており、県内企業もIT化推進において積極的な姿勢を示していることがある程度理解できる。

○本県における情報産業振興策への理解度については、「名前は知っているが内容はあまり解からない」と「名前も内容もほとんど解からない」の合計が74.5%とかなり高い数値を示しており、結果的には、県民(民間企業を含む)への振興策の周知が遅れている点を指摘することができよう。

○本県で推進されている情報産業振興策のなかでよく耳にするものは何かと質問したところ、「沖縄マルチメディアアイランド構想(沖縄県)」(61.8%)と答えた企業が最も多く、その次に「沖縄マルチメディア特区構想(郵政省)」(25.7%)、「沖縄国際情報特区構想(郵政省)」(11.8%)の順となっている。

○次に、上記振興策の名前からイメージとして最初に思い浮かぶものを選んでもらったところ、「コールセンター誘致」(43.6%)が他を引き離しトップで、次に「人材育成」(26.7%)、「コンテンツ産業等の集積」(11.3%)、「通信費補助」(10.8%) 、「光ファイバーの陸揚げ地」(5.1%) 「グローバルIX」(2.1%)、「その他」(0.5%) と続いている。

○各情報産業振興策の行政側による県民への説明状況については、「説明が不足している」(73.6%)と答えた企業が最も多く、「説明は十分である」は10.0%にとどまっている。要するに、県内企業や一般県民には、行政側が策定・推進している施策の内容等についてそれほど認識されていないという結果がこのような数値として表れていると思われる。

○県民に対する情報産業振興策の積極的な内容の説明等は必要か、との質問については、ほとんどの企業が「必要である」(99.1%)と答えている。

○振興策の積極的な内容の説明等は「必要である」と答えた企業(109社)に対して、その理由を質問してみたところ、「将来の情報産業を支えていくのは県民である」と「新たなビジネス展開に役立つ可能性がある」と答えた企業の割合がそれぞれ4割弱と高く、次いで「県民としては行政側と共通認識を持つべきである」が2割強の数値を示している。民間側からすれば、行政側は振興策の具体的な中身についての県民への周知や、各施策の実施過程においても「県民の積極参加型」で推進していくのが大切であるという意識を強く持っているという点を当結果から確認することができる。

○一方、振興策の積極的な内容の説明等は「必要でない」と答えた企業(1社)に対して、その理由を質問してみたところ、「振興策の内容が難しすぎてよく解からない」との答えであった。

○IT革命の本来の目的についての質問では、約半数の企業が「ITはツール(もしくは手段)であり目的そのものではない」(50.9%)と答えている。一方で、「IT革命自体がビッグなビジネスチャンスを創出」(41.2%)と答えた企業も多かった。「ITは難しい世界なので理解しにくいが世の中の流れに乗るしかない」(6.1%)と答えた企業も若干あった。

○本県でのIT化推進において、我々は何をすべきかを質問したところ、「学校教育の拡充」(36.9%)、「企業内でのIT化推進」(33.0%)と答えた企業がそれぞれ3割強を占め、次に「一般家庭へのマルチメディア普及」(23.6%)、「高齢化に対応したマルチメディア普及」(5.4%) と続いている。

○IT革命と沖縄文化(県民の生活スタイルも含む)との関係についての質問では、「情報発信」や「ビジネス展開への期待」などプラス面で捉えている企業の割合が9割弱とほとんどを占めており、現状においては本県の独自な文化はITとうまく融合できるとの肯定的な見方をしている企業が多いとの認識ができよう。

○情報産業振興策についての行政側への要望では、「通信費低減策の推進」(28.8%)、「企業のIT化推進に向けた助成制度の拡充」(26.4%) 、「教育制度のなかにITを積極的に導入」(24.5%)と答えた企業がそれぞれ2割台となり、次に「一般家庭等へのパソコン普及のための積極的な助成」(11.8%) 、「規制緩和の推進」(7.5%) 「民間主体でやるべきであり行政側への要望は特にない」(0.5%) 「その他」(0.5%)と続いている。

○最後に、IT革命について意見を求めたところ、企業総数110社のうち34社より様々な意見が寄せられた。これら多数の意見を、当部において<県民への周知>(3件)、<IT教育の拡充>(6件)、<通信費低減策>(4件)、<ハードの普及>(2件)、<その他行政側への期待>(6件)、<企業における今後の取り組み>(3件)、<その他意見>(10件)の7項目にまとめた。

○振興策の推進にあたっては、主体となる県民への振興策の周知を徹底させるべきである。そして、IT教育は、学校のみならず一般家庭や企業などあらゆる場所が教育現場との認識を持ち、ネットワーク化を推進し、県民の日常生活へ幅広くマルチメディアを普及・浸透させていくことが重要である。

○行政側と県民(民間企業を含む)は、振興策の推進において同一の方向性を保ちながらIT立県の実現を図っていくという共通認識を持つことが何よりも大切であろう。

 

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