Ryugin Research Institute Ltd.

調査レポート

防衛省関連予算の推移と経済効果について

〈要旨〉

 公共工事は全体的には高い水準で推移しているが、県と市町村発注工事が減少したことで県内企業の請負金額が減少している可能性がある。公共工事を受注した企業の資本金階層別に請負金額をみると、資本金1億円以上の大手企業の請負金額は前年度比5.8%増加しているのに対し、県内企業が多くを占める資本金1億円未満の請負金額は同15.8%減少している。

 県内の公共工事は、主に沖縄振興予算と防衛省関連予算の2つの予算から構成されているが、沖縄振興予算に目立った増額はなく防衛省関連予算の増額によって国発注工事が増加しているものと考えられる。ここから、防衛省関連工事の県内公共工事に占めるウエイトが大きくなっていることが示唆される。

 防衛省関連予算は、主に①沖縄関係経費、②米軍再編関係経費(地元負担軽減分)沖縄関係経費、③日米特別行動委員会(SACO)沖縄関係経費、そして④自衛隊関連予算の4つに区分される。④自衛隊関連予算については予算ベースで把握することができないが、それでも防衛省関連予算(①+②+③)をみると、2023年度歳出ベースでは3,097億円となっており、同年度沖縄振興予算2,679億円を上回る巨額の予算が計上されていることがわかる。

 近年の防衛省関連予算のマクロ的な方向性を知ることは有益な判断材料の一つとなる。しかし、予算からでは実際にどれほどの資金が県内の建設工事に投入されているのかを捕捉できない。そこで、沖縄県経済にもたらす効果を定量的に分析するため、沖縄防衛局の建設工事発注実績から、県内企業受注に係る防衛省関連工事の経済効果を試算した。

今回の調査より、2022年度の工事発注実績から推計した直接効果は561億1,000万円、経済波及効果は910億6,100万円と算出され、沖縄県経済にもたらす効果を定量的に把握することができた。しかしながら、県内企業が受注したと推計された契約金額562億4,100万円は工事発注実績総額1,281億2,600万円の43.9%に留まることがわかった。

 近年は、比較的小規模工事中心で主に県内企業が受注する県、市町村発注工事が減少している一方、防衛省関連工事の増加により県内公共工事の総額は引き上げられている。先行きについても自衛隊施設の整備が計画されるなど需要の増加が見込まれている。

この状況が続くと、これまでと比べて県内で需要される公共工事に対し、県内企業が関わりをもつ機会が減少するほか、県内企業の受注状況においては2極化が進むことなどが懸念される。こうした中、防衛省より自衛隊施設の強靭化を図る最適化事業で地元企業活用の取り組みを検討していることが報道された。地域経済にとってプラスの影響が見込まれ、今後の動きに注目したい。

 

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