Ryugin Research Institute Ltd.

調査レポート

沖縄県のオープンデータ促進に係る提言

(要旨)

・厚生労働省の「人口動態調査(概数)」によれば、2022年の全国の出生数は、調査を開始した1899年から過去最小の79.9万人を記録した。また死亡数は、戦後最多である158.2万人を記録しており、自然減は過去最大の78.2万人と人口減少社会の進行を如実に示している。

・沖縄県でも本土復帰した1972年以降で初めて人口減少に転じており、これまで全国の中でも高い出生率を誇っていた当地にも、超高齢・少子化の波が本格的に訪れる状況にある。

・沖縄県含む全国で取り組む課題として、減少する生産年齢人口が及ぼす労働力不足の中で、これまで享受してきた利便性を大きく低下させず、多様化するニーズにどのように対応すればいいかということがある。

・懸念されるこの課題に対して、これまでの人口増加局面で構築されたモデルを見直し、人口減少局面に合致した経済社会基盤を再構築する必要がある。人口増加局面の経済は「需要が供給に合わせる経済モデル」と表現される(デジタル庁)が、当該モデルでは人口減少局面ではうまく機能せず、至るところで歪みが発生する。人材不足による労働力低下や消費者が減少する市場では、人口増加局面とは逆の「供給が需要に合わせる経済モデル」へのシフトが求められる。

・「供給が需要に合わせる経済モデル」にシフトするには、「需給をリアルタイムで把握し、供給側の意思決定を待たず、先にモノやサービスを動かすためのデジタル基盤が必要(デジタル庁)」である。その実現のため、政府はICTを最大限に活用して社会的課題解決と経済的発展を両立させ、快適で活力に満ちた質の高い生活の実現を目指すとして、”Society5.0”の実現を目指している。

・”Society5.0”では、実社会(フィジカル空間)の状況をデータ化し、仮想(サイバー)空間へシームレスに連携させ、大規模なデータ処理技術等を駆使して分析/知識化を行い、そこで創出した情報や価値によって産業活性化や社会課題解決を図るとされている。

・非常に高度なその概念を実現させるためには、具体的な社会実装の仕組みが必要となる。それが「スマートシティ」である。政府が進める「デジタル田園都市国家構想」は、「地方創生版のスマートシティ」と呼ばれる。スマートシティでは、分野を横断したデータ連携やデータの利活用が求められる。

・分野横断でのデータ連携が行われ、人手を介さない仕組みが多数実施されるためには、実社会におけるあらゆるデータを機械判読可能な形式に整え、かつ常に二次利用ができる状況にする必要がある。換言すれば、「コンピューターが働きやすい環境」を新たに整備する必要がある。

・オープンデータは、「機械判読可能」な「無料」で「二次利用」ができるデータであり、まさに人口減少局面におけるデジタル社会(経済)基盤を支えるための資源である。オープンデータの取り組みは、”Society5.0”を社会実装する「データ駆動型社会」実現の一環であり、沖縄県の将来の社会(経済)基盤を構築する重要な取り組みである。沖縄県では「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」の中で”Society5.0”に言及し、「本県の特性を踏まえた分野横断的なデジタル化やデジタル・トランスフォーメーション(DX)」を進めるとし、地域社会の課題解決や強靭な産業構造への転換を図るとしている。

・2022年度まで、沖縄県内基礎自治体のオープンデータの取り組みは「全国最下位」であった。2023年度は沖縄県の「デジタル社会推進課(企画部)」「ITイノベーション推進課(商工労働部)」主導のもと、基礎自治体と連携し大幅に取組率を改善させている。この気運を活かし、沖縄県の特性を踏まえたデジタル社会基盤「okinawa society5」の実現に向けて、まずはそのベースとなるオープンデータ取り組みについて、①オープンデータ「量と質」の充実、②ユースケースの共有、③データ人材の育成、④「共創の場」でのデータ利活用促進、以上4点を提言する。

 

 

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