Ryugin Research Institute Ltd.

調査レポート

県内の観光目的税導入を巡る動向と導入に向けた提言

《要旨》

・自治体が観光振興等を目的とした独自財源確保のため、国内各地で観光目的税の導入が進められている。県内でも従前より導入が検討され、コロナ禍で一時中断したが、沖縄観光が本格的に回復傾向にある現在、観光目的税の導入についての議論が再燃している。

・観光目的税は、条例により地方自治体が制定できる法定外目的税のひとつであり、沖縄県においても、観光振興や、そこから派生する課題の解決、そして自然環境の保護に係る財源確保の有効な手段として導入が必要である。

・沖縄県は、観光目的税について2026(令和8)年度を導入目標としている。併せて複数の市町村においても同様に導入が検討されている。一方で観光業界においては、導入に反対の声も根強い。コロナ禍における業界のダメージは相当なものであり、回復途上の現時点では導入負担がある点が主な理由であるが、資金使途や税額など、現在検討されている制度設計について疑問を呈する意見もある。

・コロナ禍という過去に類をみないパンデミックを経験した前後では、観光業界のおかれている状況が異なる。従って以前に検討された制度設計が、現在の状況に適しているかどうか再検討が必要であり、以下を検討のポイントとしてあげる。
(1)検討委員会の再立ち上げ、(2)税率の見直し、(3)沖縄県と市町村の税収配分の見直し、(4)税収の適正管理のための「基金」の設置、(5)基金の運営主体の存在、(6)使途事業の検証の必要性、(7)事務コストの全額補てん、(8)税務部門の事務負担・徴収コスト対応、(9)見直しルールの制度化 等。

・導入後の検討課題として、23年3月に沖縄経済同友会が提言した、観光業界を含めた幅広い県内企業を対象とした「危機管理基金」の設立をあげたい。同基金創設のための「沖縄観光振興くじ(仮称)」や、過去にも議論されてきた「入域税」についても、検討の余地があると考える。

・観光目的税の導入に当たり、コロナ禍における県の観光産業に対する対応についての検証と、観光関連団体等との丁寧な協議を重ねた上で、沖縄観光において今何が求められているかという点を考えていくことが、観光産業をリーディング産業として県が発展していくために極めて重要である。

・行政、民間ともに手を携えて同じ目標に向かっていくためには、県の観光部局のみならず、全庁的な取り組みが必要であり、知事のリーダーシップに期待する。

 

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