Ryugin Research Institute Ltd.

調査レポート

コロナ禍での県内景気と労働市場の動向

(要旨)

 2019年末に中国で発生した新型コロナウイルスの感染拡大から3年半が経過した。20年4月に政府は緊急事態宣言を発出し、経済活動は大きな制約を受けた。その後、ワクチン接種や感染対策の向上などから水際対策を含め、様々な制限が緩和され、経済活動もコロナ禍前の水準に戻りつつある。以下では、これまでのコロナ禍で県内景気と労働市場がどのような影響を受けてきたか、各種データなどから分析し、今後の県内景気や労働市場の展望や課題について概観してみた。

 〇コロナウイルスの新規感染者数と移動人口の推移

流行の第1波が発生した20年4月には緊急事態宣言が発出され、人と人の接触機会を「最低7割、極力8割」を削減する目標が掲げられ、幅広い業種に休業要請が出された。20年7月下旬以降の第2波では飲食店などでの感染が多くみられた。20年11月頃からの第3波では、より広い地域や幅広い年代層に感染が広がり、家庭内感染の割合が増加した。21年3月後半からの第4波ではまん延防止等重点措置が適用され、飲食店での酒類提供の禁止や時短営業など前回よりも強い措置が盛り込まれた。21年7月後半以降の第5波では、東京五輪が異例の開催となる中、感染者数が各地で過去最多を更新し、自宅療養や入院・療養等調整中の患者が急増し、死亡者も増加するなど医療体制が危機的な状況に陥った。22年1月には第6波が発生し、感染者数は過去最多を更新し続けた。オミクロン株によるものとみられ、再感染リスクが高く、感染拡大の速度も非常に速いことが確認された。22年7月からの第7波では、オミクロン株BA.5という系統のウイルスが出現し、感染力が高く、各地で感染が拡大し、重症者数も増加した。22年11月からの第8波では、死亡者数が過去最多を更新した。感染報告のうち80歳以上の占める割合が増加しており、正月休み等による帰省や医療機関、介護施設でのクラスター発生によって感染する機会が増えた。23年4月以降の感染者数の増加は第9波の様相を呈している。特に本県では突出して増えており、第8波を上回る事態となっている。制限緩和に伴う社会活動や経済活動の活発化に加え、新たな変異株の出現が背景にあるとみられる。
 ここで、本県の移動人口をみると、第1波では未知のウイルスに対する恐怖心や政府の緊急事態宣言の効果もあり、移動人口は19年の同週比で約6割の大幅減となった。その後、流行の波の発生に伴い移動人口も減少したが、第2波の減少率は第1波より小さくなり、第3波から第5波では19年の同週比で3割程度の減少となっている。感染者数がゼロ近傍を続けた21年の10~12月は移動人口の減少率が縮小を続けたが、第6波では再び移動人口が減少した。しかし、その後の第7波では爆発的な感染となったものの、移動人口の減少率は逆に縮小し、19年の同週とほぼ同じ水準で推移しており、第8波でも同様な傾向がみられる。既に感染者数が多くなったことやワクチン接種の進捗、長期におよぶ宣言で人々が「自粛疲れ」で感染抑制の意識が低下してきたこと、また自粛の長期化によって事業や生活が成り立たなくなっている人々の活動再開などが指摘されている。

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