Ryugin Research Institute Ltd.

調査レポート

コンベンションアイランドをめざして

要旨

○国際コンベンションの開催状況を見ると、世界および日本において、開催件数、参加人数とも増勢にあり、今後ともコンベンション産業は、その重要度を増すものと思われる。

○シンガポールはコンベンション政策について、観光政策「ツーリズム・アンリミテッド」構想や「ツーリズム21」で戦略を明確に示し、シンガポール政府観光局(STB)やシンガポール・エキシビション・アンド・コンベンション・ビューロー(SECB)を中心に政策を着実に実行に移している。その結果、世界で16年連続10位以内、アジアの都市では1位の座を守り続けている。

○シンガポールではコンベンション産業を一般にMICE産業と呼び、政府観光局のエキシビション・コンベンション・マーケティング部がマーケティング戦略の立案・推進を担当している。

○エキシビション・コンベンション部は対外的にはSECBと名乗り、シンガポール・コンベンション展示会サービス供給業者協会とシンガポールホテル協会といった業界団体の協力の下、様々なキャンペーンを実施し、MICE産業拡大に寄与している。

○シンガポールがMICE産業に注力するのは主に次の理由からである。
 ・MICE参加外国人は、観光客に比べ滞在日数が長く、消費額が多い。
 ・観光客数の入込みの減少により総観光消費額が減っても、MICE関連の消費額はそれほど減少しない。
 ・国際収支における旅行の収支状況が悪化しており、観光客より単価の高いMICE客の誘致に力を入れている。
 ・他には国際コンベンション開催による自国のイメージアップやコンベンション産業の裾野の広さなどが理由としてあげられる。

○シンガポールは、次のような要素を備えることによりコンベンション誘致競争を優位にすすめ、アジアナンバーワンの地位を維持している。
 ・物理的・地理的条件
 ・官民の質の高いサービスとプロモーション活動
 ・充実したコンベンション施設
 ・アフターコンベンションの充実
 ・語学力(英語など)

  • 特に、アフターコンベンションでは、近隣国に投資しリゾート開発をすすめ、国内のコンベンションとセットで売ることにより自国の不利性を克服している。

○シンガポールは、自国の投資先としての価値を高めるため、また、観光誘致で優位に立つため、緑化政策を国家の重要戦略として取り組んできた。

○マレーシアは観光政策の一環としてコンベンションを振興している。施設面では充実度が増してきており、シンガポールに対抗できる力をつけつつある。 ○マレーシアでは、観光客、コンベンションの増加を目指し、リゾート開発のある段階で、APECのような首脳級の国際会議を招致している。

○沖縄県は、現在観光入込み客数の伸びが好調である反面、次の様な課題を抱えており、課題解決のひとつの手段としてコンベンションの振興が望まれる。
 ・1人当たり観光消費額が伸び悩んでいる。
 ・観光入込み客に占める県外客(国内客)の割合が圧倒的に多い。
 ・観光のオンシーズンとオフシーズンの差が大きい。
 ・2~3泊中心で滞在日数が短い。
 ・リピーター客が多く、旅行者の嗜好の多様化への対応を迫られている。

○県内のコンベンション開催状況は、総じて国内・国際会議とも増加傾向にあるが、規模的にはこれからといった状況にある。

○沖縄コンベンションセンターは、今後とも県内コンベンション機能の中心であり、今回決定した中小会議室の増設を含め、さらに改善に向けての取組みが必要とされる。また、サミット会場の万国津梁館は、今後、リゾートコンベンションというコンセプトでの誘客が期待される。

○コンベンション誘致の中心的な推進機関である沖縄観光コンベンションビューローは、シンクタンク機能(情報、調査、企画)の強化、官民の役割分担の明確化、民間活力の活用を軸に組織基盤、機能の強化が課題となっている。

○昨年、県内の11の企業による沖縄県コンベンション事業協同組合が設立され、本格的なPCO組織として実績をあげている。このことは、県内において、コンベンションが産業としての広がりを見せはじめたことを意味しており、非常に意義深いことである。

○今回のシンガポール、マレーシア調査で感じたことは、沖縄の観光行政に明確な戦略が不足していることである。沖縄県がこれからの観光の在り方を含め、観光予算規模、推進体制をもう一度見直し、観光に対するスタンスをはっきりさせる必要があろう。

○本レポートでは、コンベンション誘致のための目標設定について提案したい。まず、ポストサミットの目標を明確にするため2003年までにAPEC首脳会議を招致し、2003年までに国際会議開催件数において、国内の都市別ランキング(JNTO基準)でトップ10入りを目指すこととする。また、コンベンション専門人材の育成のため、行政(OCVB)と民間のPCO、ホテルから若干名を英語圏での長期研修に派遣し、同時に英語のプロを養成する。

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