Ryugin Research Institute Ltd.

調査レポート

沖縄におけるサイクリスト誘客効果の推計 ―沖縄県における自転車活用実態調査の結果を踏まえて―

〈要旨〉

 当社では、サイクルツーリズムが沖縄観光の積年の課題である閑散期対策に大きな役割を果たすと期待している。その理由は、全国的に路面が凍結しやすい冬季はサイクリングを控えざるを得ない時期となるが、年間を通して温暖な沖縄は冬季でも快適にサイクリングが可能な数少ない地域であるためである。しかし、沖縄観光におけるサイクルツーリズムを検証するにあたり、統計が不足しており、サイクリスト(自転車に乗る人)誘客効果の定量的な調査・分析は困難な状況であることがわかった。
 こうした背景を踏まえ、今回アンケート調査を実施し、誘客対象となるサイクリストの利用実態、消費額に焦点をあてた。 
 サイクリストに対するアンケート調査結果を分析した結果、以下のことがわかった。
 まず、来沖した時期をみると、サイクリストは冬季に多く来沖する傾向が明らかとなり、閑散期の誘客が期待される結果となった。また、沖縄を除く他地域でサイクリングした時期をみると、冬季に少なくなっていることがわかった。ここから気候の違いにより他地域との差別化を図ることができ、受け入れ環境の整備を進めることで安定的な誘客ひいては閑散期における入域観光客数の底上げにつながることが示唆された。
 次に、観光消費額の推計を比較した。サイクリストの観光消費単価は80,845円となり、サイクリストが閑散期に多く来沖する傾向を踏まえ、4-6月期、10-12月期、1-3月期の一般的な国内観光客と比較すると、消費単価で1.12~1.25倍ほど大きくなることがわかった。費目別では、宿泊費が1.58~1.90倍、飲食費が1.76~1.83倍と消費額が大きくなった一方、県内交通費が0.58~0.66倍、土産・買物費が0.49~0.57倍、娯楽・入場費が0.30~0.43倍と消費額が小さくなった。宿泊、飲食に対する消費が大きくなった理由の一つに、サイクリストは一般的な国内観光客と比べて滞在日数が長い傾向にあるためであると考えられた。また、こうした消費動向の違いにより、モノやサービスを提供する県内産業に及ぼす影響も異なってくることから、これを経済効果の観点から推計した結果、県内の様々な産業に波及し、とくにサービス業に対する効果が大きいことがわかった。 
 以上より、沖縄観光におけるサイクルツーリズムは新たな観光コンテンツの一つとして有益であると考えられることがわかった。
 最後に、本調査よりサイクルツーリズムを推進する上で取組むべきと考えられる、(1)自転車推進協議会の設置、(2)他地域等との連携、(3)継続的な調査の実施、の3点について提言を行った。
 今回のアンケート調査実施にあたり、日本トランスオーシャン航空株式会社、株式会社沖縄タイムス社、株式会社琉球新報社にご協力いただきました。また、多くの皆様よりアンケートのご回答をいただきました。
 ご協力いただきました皆様に厚くお礼申し上げます。

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