Ryugin Research Institute Ltd.

調査レポート

県内健康食品業界の現状と今後の展望

要旨

-県内健康食品業界の現状と今後の展望-

○高齢化や健康志向の高まりで、本県の健康食品業界は、日常生活の中で薬草を取り入れてきた経緯や「長寿県沖縄」のイメージなどを背景に業者数が大きく伸び、製品の種類も増加している。県も「産業創造アクションプログラム」で有望産業として位置づけ、産業協議会を設立させるなど支援策を展開した。

○個々の健康食品加工業者をみると中小規模の企業が多く、取扱開始年も大半が85年以降となっている。また、県内企業の年間売上規模は琉球銀行推定によると、97年度で概ね70億円とみられる。

○県内で生産されている薬草はウコン、アロエが中心である。加工業者が栽培農家との契約により購入しているが、一部加工業者による契約の見直しや不履行などにより生産農家が収穫を放棄せざるを得ない状況も生じている。健康食品の販売先は観光土産品店への出荷も含め、過半が県外向け販売となっている。

○市町村の薬草関連事業をみると、本島南部4町村(玉城村、大里村、知念村、佐敷町)では広域的な事業計画の中でウコンを中心に民間資本を取り入れた薬草園構想がスタートする。また北部では宜野座村、名護市、伊是名村が主にウコン、今帰仁村がアロエベラの産地となっている。宮古地区では城辺町が主にウコン、下地町がアロエベラとなっている。先島地区では輸送コストも大きく、販売先の確保や流通システムの確立などが課題である。

○市場が大きく伸びているウコンについてみると、県産ウコンだけでは対応ができず、また原料の安さも影響し、中国、インドネシア、ミャンマーなどを中心に98年に254トン(乾燥もの)と97年の2倍の輸入規模となっている。  

○消費者の動向については、琉球銀行来店客を対象にアンケート調査を行った。調査結果によると、健康食品を「現在使用中」が30%強、「過去に使用した経験有り」が30%弱で、約6割が健康食品を経験している。使用の多かった健康食品は「(その他)健康茶」、「ウコン類」で、このほか「はちみつ・プロポリス類」、「アロエ類」の順となった。使用していた健康食品をやめた理由としては「値段が高い」が最も多く、また健康食品を使用したことがない回答者の理由は「健康なので不要」、「値段が高い」が多かった。

○今後、本県の健康食品業界が中長期的に成長を続けていくには、①個別企業では取り組みが難しい課題に対応するための「沖縄県健康食品産業協議会」の組織強化、②バイオ技術の活用や食材としての開発など「多様な商品開発への取り組み」、③安全性や信頼性へのニーズに対応するための「認定マークの取得」、④本県の薬用植物および健康食品関連部門の中核施設としての「薬用植物園」の設置、⑤基礎研究や人材育成の役割を担う「大学への資源植物分野の学科・講座の設置」などに向けて産官学が連携して取り組んでいく必要がある。

○本県においては、今後は民間、行政が一体となり、豊かな町づくりや良質な住宅地の形成など本来の土地活用に即した市場の創造を図り、かつ健全な市場環境整備へ積極的に取り組むことが期待されている。

-中国調査の概要-

○高級岩茶で有名な武夷山市は豊富な森林資源に恵まれている。福州市と結ぶ鉄道も完成間近で物流インフラも整備されつつある。タケノコの生産が盛んで水煮タケノコは主に日本に輸出されている。食用菌としてはシイタケやマッシュルーム、キクラゲなどを生産している。薬草類は一部の農家で試験的に栽培を試みているようだが本格的な栽培は行われていない。市は「気候的にはほとんどの薬草栽培に適している」と説明した。茶葉の共同研究や茶を素材とした健康食品開発の分野で沖縄との協力関係も可能であると積極的な姿勢を示した。

○福州市では、福建省農業科学院で食用菌などをテーマに意見交換をした。同科学院では、独自にアガリクス茸の栽培、商品化に取り組んで成功し貿易会社を通して日本などに輸出している。中国でのアガリクスの生産は福建省が80~90%を占め、販路は日本向けが約50%で、中国国内が30~40%、10%が香港、台湾となっている。同科学院の食用菌の研究はアガリクスのほか、マイタケやシメジ、霊芝(レイシ)などもテーマにしている。沖縄側との共同研究や委託研究については、「科学院レベルでは権限がない」としながらも「要望に応じて栽培研究する技術はあり、沖縄が菌母を持ち込めは、中国で生産、輸出することも可能である。」と共同プロジェクトなどについて可能性を示唆した。

○香港でも健康志向の高まりで健康食品のマーケットが拡大しており、特に高所得者層にその傾向が顕著である。香港貿易発展局は中国との提携に関して「市場としての魅力は大きいがインフラの整備や品質管理の問題など難しい面もある」として、中国に入る際には香港企業のノウハウを参考することを提案した。 香港在住の県出身経営者は、「健康食品は値段が高くても売れるようになってきたが競争も厳しく、沖縄の製品をここで売るためにはマーケティングと独自性が必要、さらに企業の意識改革も必要である」と指摘した。健康食品を扱っている専門店のうち21店舗を有する企業を訪問したが、低カロリー食品やダイエット食品などを主に取り扱っており、日本製の健康食品もよく売れているようである。

○県内企業が中国から輸入している薬用植物としては、ウコンやアガリクス、レイシなどがある。重金属や残留農薬の問題は改善されつつあるがゴミの混入などまだ問題点も多い。今回の調査を総じてみると、短期的に活用可能な資源の確認には至らなかったものの、種苗の導入、調達については、日本企業などが中国の公的機関に対して研究のスポンサー、ビジネス絡みで新品種の種苗などを調達しているケースもあり、こうした事例が参考になろう。

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