Ryugin Research Institute Ltd.

調査レポート

沖縄県における借家世帯の動向について

【要旨】

 沖縄県の賃貸住宅について需要側から分析を行った。2015年頃から建築コストが上昇しはじめた背景を踏まえ、2015~2020年の5年間の変化から借家に住む世帯の動向を分析した。また、家族類型別世帯主の年齢と世帯数の推計を行い、市町村ごとの特徴を明らかにするとともに借家需要の変化を示した。

 まず、世帯主の年齢別に住宅の所有関係をみると、世帯主の年齢が低いほど借家に住む傾向が強まり、世帯主の年齢が高いほど持ち家に住む傾向が強まった。そこで、市町村別の世帯主の年齢と借家率の2変数間の関係性に着目し、この2変数の分布の傾向から借家需要の強さが見込まれる市町村について分析を行った。あわせて5年間の世帯の増減数と変化率を考慮したところ、沖縄市と宜野湾市で借家需要の強まりが示唆される結果となった。

 次に、市町村単位でより詳細な需要状況とその変化を把握するため、家族類型別に世帯主の年齢と世帯数の推計を行った。そして推計を行った結果から5年間の変化を踏まえ、4つのグループに分類した。『(1)県の増加率を上回るグループ』は、すべての家族類型の増加率が高いが、なかでも「③単独世帯」の増加率の高さが顕著であった。『(2)核家族世帯のうち若い世帯主で減少がみられるグループ』は、「①夫婦と子供から成る世帯」と「②夫婦のみ、ひとり親から成る世帯」を合わせた核家族世帯の若い世帯主で減少がみられた。『(3)「③単独世帯」の若い世帯主が多いグループ』は、大学などが立地、隣接しているため、「③単独世帯」の24歳以下の世帯主が比較的多いと考えられるが、その動向には地域性がみられた。『(4)世帯主の低年齢化がみられるグループ』は、「③単独世帯」の増加によるところが大きいことがわかった。

 これらの結果から、世帯主の年齢が比較的低い核家族世帯で借家需要の減退が示唆された。また、世帯主の年齢を問わず、多くの市町村で「③単独世帯」の需要の強さが示された。

 他方、本分析では需要の動向に重きをおいたため、その背景にある経済、社会的要因については十分に考慮されていない。背景には重要と考えられる種々の要因があり、今後はこれらの点に留意しつつ調査を続けていきたい。

 

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