Ryugin Research Institute Ltd.

調査レポート

沖縄県の人口・世帯の動向 

( 要 旨 )

1.総人口の推移

・沖縄県の総人口は、県の「推計人口」を2020年の国勢調査人口で補間補正した後の人口でみると、22年2月以降は3か月連続で、前年同月比で減少に転じている。日本人の増加率が低下する一方で外国人の減少率が上回ったことが要因であり、新型コロナウイルスによる入国規制が影響している。

2.出生数

・本県の出生数は2016年頃から減少傾向がみられる。15~49歳人口が2000年以降、減少を続けている中で出生率も16年以降は減少に転じており、主に出生率の低下が影響している。
・出生率は15年以降に低下しているが、有配偶率は僅かながら上昇しているのに対して有配偶出生率が低下しており、この有配偶出生率の低下が影響している。なお、20年の有配偶出生率の低下は新型コロナウイルスが影響している可能性もある。
・年齢階級別の出生率の分布をみると、1985年には25~29歳が最も高かったが、15年以降は30~34歳にシフトし、出生率も低下しており未婚化や晩婚化の動きがみられる。20年は15年とほぼ同じ分布となっており、これまでの未婚化や晩婚化の動きが止まっている状況が窺われる。
・年齢階級別の有配偶出生率は15~19歳で上昇傾向が続いており、いわゆる「できちゃった婚」の割合が高くなっている(本県は出生数の30.8%、全国は18.4%)。
・母親の出生順位別の出生数が全体の出生数に占める割合では、第1児と第2児は全国が本県を上回っているが、第3児以上では本県が全国を上回っており、全国より子沢山の特徴がみられる。

3.死亡数

・死亡数は人口の高齢化に伴い1990年代以降、増加基調にあり、粗死亡率は本県、全国とも1990年以降、上昇が続いているが、男性、女性ともに全国を下回っている。粗死亡率は高齢者の多い都道府県では高くなるため、年齢構成を調整した年齢調整死亡率でみると、医療技術の進歩等から全国、本県の男性、女性とも低下傾向にあり、男性と女性とも本県と全国はほぼ同水準となっている。
・都道府県別の男性、女性の年齢調整死亡率では、本県の男性は1980年までは全国47位と最も低かったが、2015年には17位まで上昇している。女性も1990年まで47位であったが2015年には27位まで上昇している。食生活の洋風化や車社会による運動不足などが影響したものと推察され、今後、医療費削減や生産性向上、高年齢者の労働力化などに向けた健康寿命の向上対策が急務である。
・死因順位別の死亡率は、2020年は本県、全国とも「悪性新生物」が最も高く、次いで「心疾患」が高いが、3位は「老衰」となっており、高齢化を反映して順位が上昇している。また「アルツハイマー病」の順位も上昇しており、高齢化が影響している。本県では「糖尿病」も10年の15位から20年には12位に上昇しており、食習慣の見直しが課題といえる。一方、本県の「自殺」は10年の6位から20年には11位に低下しており、自殺対策の取り組みが奏功している可能性が高い。

4.社会増減の推移

・本県の県外からの転入者数と県外への転出者数は、両方とも年間で概ね2万5千人~3万5千人の範囲で推移している。社会増減は景気要因や沖縄ブームなど様々な要因によって転出超、転入超となる。20年は新型コロナウイルスの影響で首都圏への転出が減少し、21年は妊娠件数の減少で自然増が縮小し、社会増減は入国規制で外国人が減少したことからマイナスとなった。
・本県の在留外国人はこの数年で急増していたが、20年以降は新型コロナウイルスの流行に伴う入国規制で減少に転じ、21年6月末の在留外国人は1万9,205人となっている。国籍・地域別では19年12月末以降、ベトナムが最も多く、21年6月末は3,006人で全体の15.7%を占めている。次いで中国が2,549人(構成比は13.3%)、米国(米軍関係を除く)が2,488人(同13.0%)、フィリピンが2,196人(同11.4%)、ネパールが1,913人(同10.0%))などとなった。

5.本県の世帯の動向

・本県の一般世帯数は2000年の44万世帯から20年には61万3千世帯に増加し、この期間の増加率は本県が39.3%増、全国が19.0%増と本県が大きく上回っている。
・本県の1世帯当たり人員は2000年の2.91人から20年には2.33人に減少し、全国とほぼ同じ人数となっている。減少幅は本県が全国を上回り、全国より核家族化が進んでいるものとみられる。
・近年、核家族化や高齢化に伴い、単独世帯の割合が高まっている。本県の単独世帯数は95年の9万世帯から20年には23万世帯に増加し、増加率は単独世帯が1.6倍で二人以上世帯の2割強の増加を大きく上回っている。1995年を100とした指数では20年は単独世帯数は259.7となり、全国(20年に188.2)の伸びを大きく上回っている。
・家族類型別の世帯数をみると、2010年は「夫婦と子供から成る世帯」の割合が最も大きかったが、15年には「単独世帯」が「夫婦と子供から成る世帯」を上回って最も多い世帯となり、20年には37.4%と、全国(38.0%)とほぼ同じ水準となっている。
・「単独世帯」のうち65歳以上の高齢者世帯の割合は10年の7.8%から20年には11.2%に上昇しており、単独世帯数に占める割合も26.5%から29.9%に高まっている。
・65歳以上の単独世帯の配偶関係では、本県の男性は「未婚」の割合が最も高く、女性は「死別」が最も高い。65歳以上の男性では全国は「死別」が最も高く、本県では「未婚」が高くなっている。

6.今後の展望と課題

・本県の人口は、増勢が鈍化しつつも増加が続く見通しであったが、コロナ禍における外国人が入国規制で減少に転じ、自然増も新型コロナウイルスの影響による婚姻件数の減少や妊娠届出数の減少で出生数の減少が更に加速することが見込まれる。
・県内の地域別の人口は、本島北部や離島では既に減少している自治体が多い。今後は産学官や地域が連携した地方創生への取り組みが重要な施策となる。今後、離島の自然を満喫しながらのワーケーションの推進やオンライン医療、オンライン教育の導入などに取り組めば、家族連れの移住者の増加や離島の人手不足の解消なども期待できる。
・人口年齢構造では、生産年齢人口が既に減少に転じており、今後は労働力人口が減少に転じると見込まれる。沖縄21世紀ビジョンや沖縄県アジア経済戦略構想を推進していく中で、深刻化していく人手不足への対応や専門分野の人材育成が課題であり、近年増加している外国人の受入れ態勢の環境整備も検討する必要がある。

 

このページのトップへ