Ryugin Research Institute Ltd.

調査レポート

断熱基準からみる沖縄のZEH要件について

【要旨】

 2020年10月、政府は「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言した。エネルギー消費量約3割を占める建築分野における取組みが急務となっている。
 本レポートでは、ZEH(ゼッチ)要件に着目した。そして、ZEH要件の断熱基準に焦点をあて、統計データから基準値設定の背景を考察し、今後の沖縄住宅にどういった影響が及ぶかを検証する。
 ZEHの定義より、要件の対象は①断熱基準の向上、②設備等の高効率化、③創エネルギーの3項目であり、これらのバランスにより、年間の一次エネルギー消費量の収支でゼロを目指している。そして、沖縄でのZEH要件は、①断熱基準の向上に求められるハードルが比較的低く設定されており、②設備等の高効率化と③創エネルギー導入が主となると考えられる。
 断熱基準は2つの基準値からなり、それぞれの地域の気候に応じて、全国8地域に区分されている。「地域8」に属している沖縄において、求められるハードルが他地域と比較して低く設定された理由を考察した結果、(ア)外皮平均熱還流率(冬季)については、冬季のエネルギー消費量が小さく、断熱の必要性が低いため対象外になったと考えられ、(イ)冷房期の平均日射熱取得率(夏季)については、基準値の見直しを経て、強度や通風性能などを重視した沖縄住宅の仕様の実態を踏まえた水準が再設定されたためであることがわかった。
 以上より、「地域8」に属している沖縄の省エネに資する取組みについては、②と③に力点を置くことが合理的であると考えられた。
 すでに、ZEHの普及に向けたさらなる施策が検討されており、住宅における省エネ対策はますます加速していくことが見込まれる。こうした変化を機に、今一度、強度や通風性能などを重視して発展させてきた「沖縄の建築計画上の手法」を客観的に再評価しなおし、データに基づいた適切な評価手法の検討が求められる。「ZEHの普及」と「沖縄の建築計画上の手法」の両輪により、省エネ化を促進することで、沖縄の気象条件、社会条件を反映した魅力的な住環境の構築を期待したい。

 

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