Ryugin Research Institute Ltd.

調査レポート

2021年度の沖縄県経済の動向

(1)概況

 2021年度の県内景気は、消費関連は、新型コロナウイルスの影響などにより、弱含みの動きとなった。建設関連は、公共工事は前年度を上回ったが、資材価格の高騰などを受け民間工事はとくに住宅投資で弱い動きがみられたことから、弱含みの動きとなった。観光関連は、新型コロナウイルス再拡大から人流制限が採られた影響を受け弱い動きとなった。全体では、2020年度と同様に「後退した」とした。
 個人消費関連は、弱含んだ動きとなった。百貨店は、新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛・消費マインド低下などにより前年度を下回った。スーパー売上高(既存店ベース)は、緊急事態宣言下での時短営業や大型商業施設への土日祝日休業要請などが響き、前年度を下回った。耐久消費財では、新車販売台数は、半導体不足や新型コロナウイルスの影響による供給網の混乱が相次いだことなどから前年度を下回った。電気製品卸売販売額は、半導体不足や前年度の特別定額給付金支給の反動などから前年度を下回った。建設関連は、弱含みの動きとなった。沖縄振興予算が前年度と同額となり、公共工事では、市町村発注の工事は減少したが、国や県発注の工事は増加したことから前年度を上回った。民間工事では、とくに住宅投資(貸家)で弱い動きがみられた。建設資材関連では、多くの資材で価格上昇による出荷量の減少がみられたが、鋼材や木材の売上高では前年度を上回った。観光関連は、新型コロナウイルス感染再拡大による人流制限の影響を受け全般的に低調ではあるものの、前年度比では持ち直しの動きとなった。入域観光客数は、国内客は前年度比で3年ぶりに増加に転じ、外国客は2年連続で0人となった。県内主要ホテルは、稼働率、売上高、宿泊収入は前年度を上回り、客室単価は前年度を下回った。主要観光施設入場者数は前年度を下回り、ゴルフ場入場者数は前年度を上回った。

(2)消費関連

 個人消費は、弱含みの動きとなった。
 百貨店売上高は、新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛・消費マインド低下などにより、衣料品や身の回り品が減少したことなどから前年度比2.8%減となった。スーパー売上高(既存店ベース)は、巣ごもり需要の高まりがみられた前年度の反動などにより食料品が減少したことや、緊急事態宣言下での時短営業や大型商業施設への土日祝日休業要請などにより衣料品、住居関連が減少したことなどから同1.4%減となった。全店ベースでは、同0.2%減となった。
 耐久消費財では、新車販売台数は、世界的な半導体不足や新型コロナウイルスの影響による海外工場のロックダウンなど供給網の混乱による減産が相次いだことなどから同16.0%減となった。電気製品卸売販売額は、半導体不足や前年度の特別定額給付金支給の反動などから同12.0%減と前年度を下回った。

(3)建設関連

 建設関連は弱含みの動きとなった。
 公共工事請負金額は、前年度比24.7%増となった。沖縄振興予算が前年度と同額となり、市町村発注の工事は減少したが、国や県発注の工事は増加した。とくに国発注の工事で増加が顕著であり、道路や港湾、防衛関連工事などが大きく寄与した。発注者別にみると、国、県、独立行政法人等・その他は前年度を上回ったが、市町村は下回った。
 建築着工床面積は、居住用、非居住用ともに前年度を下回ったことから同8.6%減となった。新設住宅着工戸数は、9,315戸(同9.9%減)となり、利用関係別にみると、持家、分譲は前年度を上回り、貸家、給与は下回った。ウエイトの大きかった貸家が前年度と比べて1,478戸減少しており、2019年度に続き減少傾向がみられた。建築受注額は同2.8%減となった。資材価格の上昇などにより先行きの不透明感が強く、とくに民間工事への影響が大きい。
 建設資材関連では、民間工事の引き合いが弱いことなどから減少した。セメント出荷量は同13.6%減となり、生コン出荷量は同20.2%減となった。鋼材売上高は出荷量が減少しているものの鋼材価格が上昇していることなどから同1.5%増となり、木材売上高は住宅関連工事向けの出荷が減少しているものの木材価格が上昇していることなどから同9.6%増となった

(4)観光関連

 観光関連は、前年度と比較すると持ち直しの動きとなった。しかし新型コロナウイルス感染再拡大により、年度初めより長期間に亘り緊急事態宣言等の人流制限措置が採られた後、感染状況が落ち着いた11月以降段階的に経済活動再開され回復傾向にあったものの、1月以降再び人流制限が適用されたことから、新型コロナ以前の2019年度と比較すると厳しい状況となった。
 入域観光客数は、年度全体では前年度比26.7%増の327万4,300人となり、3年ぶりに増加に転じた。国内客は同26.7%減の327万4,300人となり、外国客は前年度と同様0人となった。
 県内主要ホテルは、稼働率は24.7%と同2.3%ポイント上昇した。売上高は同8.8%増となり、宿泊収入は同1.9%増、宿泊単価は同7.5%減となった。那覇市内ホテルは、稼働率は27.1%と同5.7%ポイント上昇し、売上高は前年度を上回り、宿泊収入、客室単価は前年度を下回った。リゾートホテルは、稼働率は23.8%と同1.1%ポイント上昇し、売上高、宿泊収入は前年度を上回り、客室単価は前年度を下回った。
 主要観光施設入場者数は同4.1%減となった。ゴルフ場入場者数は、県内客、県外客ともに増加し同1.9%増となった。

(5)その他

 雇用情勢をみると、就業者数は、農業・林業、生活関連サービス業・娯楽業などで減少したものの、学術研究、専門・技術サービス業、公務などで増加し、失業率は3.6%と前年度と同水準となった。新規求人数は同14.0%増となり、有効求人倍率は0.83倍と前年度を上回った。
 企業倒産は35件で前年度を5件下回った。新型コロナ対応の金融支援などが寄与し、件数は過去最少となった。業種別では、サービス業15件(同3件減)、建設業7件(同5件増)、小売業が5件(同1件増)などとなった。負債総額は82億3,400万円で同5.4%減となり、大型倒産(負債総額10億円以上)は2件(同数)、大口倒産(同1億円以上10億円未満)は14件(同5件増)となった。
 消費者物価(総合)は、交通通信などが下落したものの、光熱・水道や家具・家事などが上昇したことなどから、前年度比0.2%上昇となった。

 

 

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