Ryugin Research Institute Ltd.

調査レポート

コロナ禍における沖縄県経済の2020~21年度実績見込みと2022年度見通し

(要旨)

1.県経済の2020~21年度の実績見込み 
 2019年末に中国で感染が確認された新型コロナウイルスは、世界的な感染拡大により国内外の社会経済活動に大きな打撃を与えた。本稿では新型コロナウイルスの影響を受けた2020年度および21年度の実質経済成長率やその内訳である需要項目などの実績見込みを早期推計の方法により推計した。また、22年度の見通しについては、当研究所の計量経済モデルを用いて予測を行った。

(2020年度の実績見込み)
 2020年度の本県の実質経済成長率は-10.6%程度となり、19年度(+0.5%程度:19年度は当研究所の推計)の成長率を大きく下回り、本土復帰後最大の落ち込みとなったと見込まれる。移輸出が観光収入の大幅な落ち込みから減少したほか、民間消費支出や民間住宅投資などが減少した。労働市場では完全失業率は3.6%で19年度を0.8ポイント上回った。消費者物価は光熱・水道費の低下により-0.5%と低下した(20年度の完全失業率と消費者物価は実績値)。

(2021年度の実績見込み)
 2021年度の実質経済成長率は+2.3%程度となり、大幅に減少した20年度から持ち直したと見込まれる。民間消費支出が持ち直し、公共投資が増加したと見込まれる。労働市場では完全失業率は3.7%程度で20年度を0.1ポイント程度上回ったと見込まれる。消費者物価は光熱・水道費などが上昇し、+0.1%程度上昇したと見込まれる。

2.県経済の2022年度の見通し
(2022年度の展望)
 2022年度の県経済を展望する上でのリスク要因は、新型コロナウイルスの感染状況とウクライナ情勢である。新型コロナウイルスはワクチンの追加接種の進捗から感染状況は落ち着いてくるものと見込まれ、政府も経済活動の正常化に軸足を移す方針である。一方、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、原油や穀物などの価格高騰や物資の供給不足などから物価が上昇しており、企業活動や家計支出への下押し要因となる見通しである。

(2022年度の見通し)
 2022年度の本県の実質経済成長率は+2.6%程度となり、21年度(+2.3%程度)を上回る見通しである。民間消費支出が物価の上昇などから伸びが鈍化し、政府消費支出は新型コロナ対策関連の支出が鈍化し、実質値では減少する見通しである。民間住宅投資や民間設備投資は資材価格の高騰などから弱含みとなり、公共投資は予算の削減から減少する見通しである。一方、観光収入は入域観光客数の回復で2桁の増加となる見通しである。労働市場では完全失業率は3.7%程度で21年度と同じ水準となる見通しである。消費者物価は、穀物やエネルギー価格の上昇や円安傾向などから+1.1%程度の上昇となり、21年度を上回る見通しである。

 

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