Ryugin Research Institute Ltd.

調査レポート

2020年度および2021年度の入域観光客数の減少が県経済に及ぼす影響

( 試 算 )

2020年度および2021年度の入域観光客数の減少が県経済に及ぼす影響

 2019年末に中国で確認された新型コロナウイルス感染症は、その後、世界的に感染が拡大し、国内外の経済活動や社会生活などに大きな打撃を与えている。同感染症は新規感染者数の増加と減少の波を繰り返しており、国内においては21年10月に第5波が収束したものの、22年1月には感染力の強いオミクロン株の感染拡大により第6波の様相を呈している。19年までインバウンドの増加に牽引されて全国の中でも好調に推移していた県経済は、コロナ禍における人の移動制限や外出自粛により、本県の基幹産業である観光関連産業を中心に業況が悪化し、全国の中でもより厳しい情勢となっている。入域観光客数は20年度に258万3,600人で前年度比72.7%の大幅な減少となり、21年度は沖縄観光コンベンションビューロー(以下、OCVB)の見込値によると320万人で前年度比では23.9%増となるが、19年度比では66.2%の減少となる見込みである。
 そこで、当研究所では入域観光客数の20年度の実績およびOCVBによる21年度の見込値をもとに、入域観光客数の減少が両年度の県経済に及ぼす影響について、当研究所の計量経済モデルを用いて試算してみた。
 以下の試算結果は、新型コロナウイルスの感染が発生しなかった場合の県経済の水準を標準ケースとして策定し、この標準ケースの入域観光客数や観光収入が20年度の実績値や21年度の見込値まで減少した場合の県経済の水準変化(入域観光客数や観光収入の減少による県経済へのマイナスの波及効果も含む)を計量経済モデルを用いて算出し、その試算結果と標準ケースとの各指標の数値の差を県経済に及ぼした影響としてみたものである
 なお、この試算は入域観光客数と観光収入の減少のみが及ぼす影響であるため、それ以外の県民の外出自粛や各種イベントの中止などの影響は含まれておらず、これらの影響も含めると、県経済へのマイナスの影響は更に大きいものになると推察される。一方、20~21年度はコロナ禍における政策支援として「雇用調整助成金の特例措置」や各種支援金の給付などが実施されたが、本試算ではこれらの政策支援は反映されていない。そのため、例えば「雇用調整助成金の特例措置」の政策効果により実際の失業者の増加数は、本試算より小さくなるものと推察される。試算結果をみる際には、これらの点に留意する必要がある。

(上席研究員 金城 毅)

 

 

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