Ryugin Research Institute Ltd.

調査レポート

2020年度の沖縄県経済の動向

(1)概況

 2020年度の県内景気は、消費関連は、新型コロナウイルスの影響などにより、弱含みの動きとなった。建設関連は、公共工事はほぼ前年並みとなったが、民間工事はとくに住宅投資で弱い動きがみられたことから、弱含みの動きとなった。観光関連は、2020年3月から新型コロナウイルスの感染拡大が鮮明になった影響で、1年を通して弱い動きとなった。全体では、2019年度の「拡大の動きに一服感」から、2020年度は「後退した」とした。
 個人消費関連は、弱含んだ動きとなった。百貨店は、新型コロナウイルスの影響などにより前年度を下回り、スーパー売上高(既存店ベース)は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う消費マインド低下などにより住居関連や衣料品は減少したものの、食料品は巣ごもり需要などにより増加したことから、前年度を上回った。耐久消費財では、新車販売台数はレンタカー需要の減少などにより前年度を下回った。電気製品卸売販売額は冷蔵庫や洗濯機などの白物家電は増加したものの、業務用製品の需要減少などにより前年度を下回った。
 建設関連は、弱含みの動きとなった。沖縄振興予算が前年度と同額となり、公共工事では国や県発注の工事は増加したが、市町村発注の工事は減少したことから前年度を下回った。民間工事では、とくに住宅投資で弱い動きがみられ、新設住宅着工戸数では、持家、貸家、分譲の減少から前年度を下回った。建設資材関連では、民間工事の引き合いが弱いことなどから前年度を下回った。
 観光関連は、2020年3月から新型コロナウイルスの感染拡大が鮮明になった影響で、1年を通して弱い動きとなった。入域観光客数は、国内客、外国客ともに大幅に減少し、1988年度の241万1,700人以来の低い水準となった。県内主要ホテルは、稼働率、売上高、宿泊収入、客室単価はいずれも前年を下回った。主要観光施設入場者数は前年度を下回り、ゴルフ場入場者数は前年度を下回った。

(2)消費関連

 個人消費は、弱含みの動きとなった。
 百貨店売上高は、新テナント開店や改装などで集客を図るも、新型コロナウイルスの影響などにより、前年度比35.9%減となった。スーパー売上高(既存店ベース)は、新型コロナウイルス感染拡大による消費マインド低下などにより住居関連や衣料品は減少したものの、食料品は巣ごもり需要により増加したことなどから、全体では同0.2%増と前年度を上回った。全店ベースでは、同2.2%増と前年度を上回った。
 耐久消費財では、新車販売台数は、レンタカーの減少や消費税率引上げの駆け込み需要の反動などで、小型乗用車や軽乗用車などが減少したことから、同4.2%減となった。電気製品卸売販売額は、巣ごもり需要により冷蔵庫や洗濯機などの白物家電が好調に推移したものの、業務用製品の需要減少などから、同4.0%減と前年度を下回った。

(3)建設関連

 建設関連は弱含みの動きとなった。
 公共工事請負金額は、前年度比0.1%減となった。沖縄振興予算が前年度と同額となり、国や県発注の工事は増加したが、前年の大型文教施設や庁舎の建設工事などの反動により市町村発注の工事は減少した。発注者別にみると、国、県は前年度を上回ったが、市町村、独立行政法人等・その他は下回った。
 建築着工床面積は、非居住用は前年度を上回ったものの、居住用は下回ったことから同9.6%減となった。新設住宅着工戸数は、10,335戸(同27.4%減)となり、利用関係別にみると、給与は前年度を上回り、持家、貸家、分譲は下回った。とくに貸家は前年度と比べて3,138戸減少した。また、分譲の一戸建てなどは同1.9%増となったが、分譲のマンションは同39.1%減と減少した。建築受注額は同28.5%増となった。前年の反動により公共工事、民間工事ともに増加したが、住宅投資などの民間工事では、新規受注額が減少傾向にある。
 建設資材関連では、民間工事の引き合いが弱いことなどから減少した。セメントは同11.3%減となり、生コンは同12.7%減となった。鋼材は同12.8%減となり、木材は住宅関連工事向けの出荷が減少したことなどから同12.4%減となった。

(4)観光関連

 観光関連は、2020年3月から新型コロナウイルスの感染拡大が鮮明になった影響で、1年を通して弱い動きとなった。
 入域観光客数は、新型コロナウイルスの感染拡大による度重なる緊急事態宣言等の発出により観光客数は大幅に減少して、年度全体では前年度比72.7%減の258万3,600人となり、1988年度の241万1,700人以来の低い水準となった。国内客は同63.0%減の258万3,600人となった。外国客は、同全減の0人となった。
 県内主要ホテルは、稼働率は22.3%と同46.2%ポイント低下した。売上高は同68.5%減となり、宿泊収入は同68.8%減、宿泊単価は同4.5%減となった。新型コロナウイルスの感染拡大で国内客が大幅減少し、外国客は全減となったことが影響した。那覇市内ホテルは、稼働率は21.2%と同53.9%ポイント低下し、売上高、宿泊収入、客室単価はいずれも前年を下回った。リゾートホテルは、稼働率は22.7%と同43.0%ポイント低下し、売上高、宿泊収入、客室単価はいずれも前年を下回った。
 主要観光施設入場者数は同78.9%減となった。ゴルフ場入場者数は、県内客、県外客ともに減少し同9.4%減となった。

(5)その他

 雇用情勢をみると、就業者数は0.4%減少した。内訳としては、運輸業、郵便業、情報通信業などで増加したものの、建設業、卸売業、小売業などで減少した。失業率は3.6%と前年度比0.8%ポイントの悪化となった。新規求人数は同28.4%減となり、有効求人倍率も0.72倍と前年度(1.16倍)を下回った。
 企業倒産は前年度比9件減の40件となった。公的な金融支援が大きく寄与し、件数は過去最少となった。業種別では、卸売業が7件(同4件増)、建設業2件(同10件減)、サービス業18件(同3件減)などとなった。負債総額は87億200万円で同50.2%増となり、大型倒産(負債総額10億円以上)は2件増加、大口倒産(同1億円以上10億円未満)は5件減少となった。
 消費者物価(総合)は、食料や家具・家事用品などが上昇したものの、光熱・水道や教育娯楽などが下落したことから、前年度比0.2%下落となった。

 

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