Ryugin Research Institute Ltd.

調査レポート

2019年度の沖縄県経済の動向

(1)概況

 2019年度の県内景気は、消費関連は、10月の消費税率引き上げの影響や訪日外国人の消費鈍化の影響により、弱含みの動きとなった。建設関連は、公共工事は増加したが、住宅着工戸数など民間工事が年度後半に動きが鈍化した結果、概ね好調のあと弱含みの動きとなった。観光関連は、年度後半は日韓関係の悪化や新型コロナウイルス感染拡大の影響により、概ね好調のあと弱い動きとなった。全体では、2018年度の「拡大している」から、2019年度は「拡大の動きに一服感」とした。
 個人消費関連は、弱含みの動きとなった。百貨店は訪日外国人の消費鈍化などから前年度を下回り、スーパー売上高(既存店ベース)は、消費税率引上げの駆け込み需要の反動や平均気温が高く推移したことなどで住居関連や衣料品は減少、食料品はセール効果などで増加したことから、前年度と同水準となった。耐久消費財では、新車販売台数はレンタカー需要の減少などにより前年度を下回った。電気製品卸売販売額はエアコンや業務用製品の増加などから前年度を上回った。
 建設関連は、概ね好調のあと弱含みの動きとなった。沖縄振興予算が前年度と同額となり、公共工事では国や県発注の工事が減少したが、市町村発注の工事が増加したことから前年度を上回った。民間工事では、とくに年度の後半から弱含みの動きがみられた。新設住宅着工戸数は持家、貸家の減少から前年度を下回り、非居住用は企業の設備投資の減少などから前年度を下回った。
 観光関連は、概ね好調のあと弱い動きとなった。年度前半は概ね好調に推移したが、年度後半は秋口以降の日韓関係の悪化や、年明け以降の新型コロナウイルスの感染拡大により弱い動きとなった。入域観光客数は、国内客、外国客ともに減少し、年度では1,000万人の大台を下回った。県内主要ホテルは、稼働率、売上高、宿泊収入、客室単価はいずれも前年を下回った。主要観光施設入場者数は前年度を下回り、ゴルフ場入場者数は前年度を上回った。

(2)消費関連

 個人消費は、弱含みの動きとなった。
 百貨店売上高は、訪日外国人の消費鈍化の影響による化粧品の減少や、衣料品セールの苦戦などから、前年度比10.3%減となった。スーパー売上高(既存店ベース)は、消費税率引上げの駆け込み需要の反動がみられ、住居関連は減少、食料品はセール効果などにより増加、衣料品は平均気温が前年より高かったことから季節商材が鈍くなり減少したことなどから、全体では同0.0%減と前年同水準となった。全店ベースでは、新設店効果などから同1.6%増と前年度を上回った。
 耐久消費財では、新車販売台数は、レンタカーの減少や消費税率引上げの駆け込み需要の反動などで、小型乗用車や軽乗用車などが減少したことから、同3.7%減となった。電気製品卸売販売額は、冷蔵庫や洗濯機などの白物家電が好調に推移したものの、消費税率引上げの駆け込み需要の反動が加わり鈍化、一方でエアコンや業務用製品は増加したことなどから、同11.1%増となった。

(3)建設関連

 建設関連は、概ね好調のあと弱含みの動きとなった。
 公共工事請負金額は、前年度比4.3%増となった。沖縄振興予算が前年度と同額となり、国や県発注の工事は減少したが、文化施設やスポーツ施設、庁舎の建設工事などにより、市町村は増加した。発注者別にみると、市町村、独立行政法人等・その他は前年度を上回ったが、国、県は下回った。
 建築着工床面積は、居住用、非居住用ともに前年度を下回り、同19.9%減となった。新設住宅着工戸数は、同12.1%減となった。利用関係別にみると、給与、分譲が前年度を上回り、持家、貸家は下回った。分譲の一戸建ては同39.0%増となったが、分譲のマンションが減少したことや貸家が2,080戸減少したことなどから減少した。建築受注額は、手持ち工事額は高水準で推移しているものの、公共工事、民間工事ともに減少したことから同46.9%減となった。とくに、民間工事は同57.0%減と大きく減少した。
 建設資材関連では、年度の後半から減少が続いているものの、セメントは同0.9%増となり、生コンは同0.8%減となった。鋼材は同1.2%増となり、木材は住宅関連工事などが活発なことから、同3.7%増となった。

(4)観光関連

 観光関連は、概ね好調のあと弱い動きとなった。
 入域観光客数は、年度前半は前年を上回る推移となったが、年度後半は秋口以降の日韓関係の悪化による韓国客の減少や、年明け以降の新型コロナウイルスの感染拡大により国内外の観光客数が大幅に減少したことから、弱い動きとなった。年度全体では前年度比5.3%減の946万9,200人となり、1,000万人の大台を下回った。国内客は、同0.4%減の697万8,800人となった。外国客は、同17.0%減の249万400人となった。外国客は2月、3月の減少が激しく、特に3月はほぼ全減となった。
 県内主要ホテルは、稼働率は69.2%と同5.0%ポイント低下した。売上高は同6.6%減となり、宿泊収入は同6.7%減、宿泊単価は同0.4%減となった。ホテルの新築や増築などによる競争激化や年度後半のインバウンドの減少が影響した。那覇市内ホテルは、稼働率は76.8%と同5.2%ポイント低下し、売上高、宿泊収入、客室単価はいずれも前年を下回った。リゾートホテルは、稼働率は66.1%と同5.0%ポイント低下した。売上高、宿泊収入は前年を下回り、客室単価は前年を上回った。
 主要観光施設入場者数は同9.0%減となった。ゴルフ場入場者数は、県外客は減少したが、県内客は増加したことから、同0.9%増となった。

(5)その他

 雇用情勢をみると、就業者数は、情報通信業、卸売業、小売業などで減少したものの、医療、福祉やサービス業などで増加し、失業率は2.8%と前年度比0.3%ポイントの改善となった。新規求人数は同0.4%減となり、有効求人倍率も1.16倍と前年度(1.18倍)を下回った。
 企業倒産は前年度比6件増の49件となった。大規模な金融政策が大きく寄与し、件数は過去3番目に少なかった。業種別では、卸売業が3件(同4件減)、建設業12件(同3件増)、サービス業21件(同5件増)などとなった。負債総額は57億9,300万円で同52.6%減となり、大型倒産(負債総額10億円以上)は1980年度以来発生がなく、大口倒産(同1億円以上10億円未満)は3件減少となった。
 消費者物価(総合)は、教育や諸雑費などは下落したものの、食料や教養娯楽などが上昇したことから、前年度比0.3%上昇となった。

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