Ryugin Research Institute Ltd.

調査レポート

2018年度の沖縄県経済の動向

(1)概況 

2018年度の県内景気は、観光関連は入域観光客が過去最高となり好調に推移した。消費関連はスーパー売上高(既存店ベース)が相次ぐ台風の接近や、季節商材が減少して前年を下回るなど一部に弱い動きがみられ、2017年度は好調な動きであったが、2018年度は概ね好調な動きとなった。建設関連は建築受注額が公共工事、民間工事ともに増加し、住宅着工戸数は依然高水準で推移し、概ね好調に推移した。全体では、2017年度の「引き続き拡大の動きが強まった」から、2018年度は「拡大している」とした。
 個人消費関連は、概ね好調な動きとなった。百貨店は改装効果や催事効果などから前年度を上回り、スーパー売上高(既存店ベース)は相次ぐ台風の接近や、平均気温が夏は前年より低く、冬は高く推移した影響などがみられ、食料品や衣料品で季節商材が減少したことなどから前年度を下回った。耐久消費財では、新車販売台数は小型乗用車を中心に乗用車が増加したことなどから前年度を上回ったが、電気製品卸売販売額はエアコンや太陽光発電システムの減少などから前年度を下回った。
 建設関連は、概ね好調に推移した。沖縄振興予算が減少し、公共工事は国発注の基地関連工事などの減少から前年度を下回った。民間工事は、持家、貸家などの新設住宅着工が前年度を下回ったものの、依然高水準で推移しており、非居住用は企業の設備投資の増加などにより前年度を上回った。
 観光関連は、好調に推移した。入域観光客数は、国内客、外国客ともに増加し、年度では999万人と前年度を大きく上回った。県内主要ホテルは、稼働率、売上高、宿泊収入はいずれも前年を下回り、客室単価は前年度を上回った。主要観光施設入場者数は前年度と同水準となり、ゴルフ場入場者数は前年度を下回った。

(2)消費関連

 個人消費は、概ね好調な動きとなった。
 百貨店売上高は、改装効果や訪日外国人の増加による化粧品消費の好調や、催事効果による食料品の増加などから、前年度比2.3%増と前年度を上回った。スーパー売上高(既存店ベース)は、相次ぐ台風の接近や、平均気温が夏は前年より低く、冬は高く推移した影響がみられ、食料品は夏に盛夏商材、冬に鍋物商材が鈍かったことなどから減少、衣料品は夏物や冬物などが減少、住居関連は前年並みとなったことなどから、全体では同0.8%減と前年度を下回った。全店ベースでは、新設店効果などから同1.3%増と前年度を上回った。
 耐久消費財では、新車販売台数は、好調なレンタカー需要による小型乗用車の増加や、堅調な自家用需要による軽乗用車および普通乗用車の増加などから、同7.1%増と前年度を上回った。電気製品卸売販売額は、洗濯機や冷蔵庫などの白物家電は増加したものの、太陽光発電システムの需要減少や、夏に気温が低く推移した影響でエアコンが減少したことなどから、同2.7%減と前年度を下回った。

(3)建設関連

 建設関連は、概ね好調に推移した。
 公共工事請負金額は、前年度比22.6%減となった。沖縄振興予算が前年度より減少となり、国や県発注の工事は減少した。沖縄防衛局発注の基地関連工事や那覇空港関連工事は引き続きみられたものの、前年度に大型工事があったため反動減となった。発注者別にみると、市町村、独立行政法人等・その他は前年度を上回ったが、国、県は下回った。
 建築着工床面積は、居住用は前年度を下回ったが、非居住用は前年度を上回り、前年度と同水準となった。新設住宅着工戸数は、貸家などが前年度を下回り、全体では同4.6%減となったが、戸数は1万6,197戸と高水準で推移した。
 建築受注額は、高水準で推移しており、公共工事、民間工事ともに増加したことから同29.8%増となった。特に、ホテル新築工事の受注が相次ぎ、前年度を大幅に上回った。
 建設資材関連では、セメントは公共工事向け出荷の減少などから、同6.8%減となり、生コンは同4.1%減とともに前年度を下回った。鋼材はホテル建設などの民間工事により、同0.6%増となり、木材は住宅関連工事などが活発なことから、同7.9%増とともに前年度を上回った。

(4)観光関連

 観光関連は、好調に推移した。
 入域観光客数は、航空路線の拡充やクルーズ船寄港回数の増加などから、前年度比4.4%増の999万9,000人となった。県内外で発生した豪雨や台風などの自然災害の影響を受けたこともあり、沖縄県の年度目標である1,000万人には届かなかったものの、6年連続で過去最高を更新した。国内客は、同1.6%増の699万8,200人となった。外国客は、旺盛な旅行需要を背景に、同11.5%増の300万800人となり、初の300万人台となった。
 県内主要ホテルは、稼働率は79.8%と同0.2%ポイント低下した。売上高は同1.9%減となり、宿泊収入は前年を下回り、宿泊単価は前年を上回った。那覇市内ホテルは、稼働率は前年同水準となった。売上高、宿泊収入、客室単価は前年を上回った。リゾートホテルは、稼働率は同0.3%ポイント低下した。売上高、宿泊収入は前年を下回り、客室単価は前年を上回った。
 主要観光施設入場者数は前年度と同水準となった。ゴルフ場入場者数は、県外客、県内客ともに減少に転じたことから、同3.2%減となった。

(5)その他

 雇用情勢をみると、就業者数は、運輸業、郵便業などで減少したものの、建設業や医療、福祉などで増加し、失業率は3.1%と前年度比0.5%ポイントの改善となった。新規求人数は同1.9%増となり、有効求人倍率も1.18倍と前年度(1.13倍)を上回った。
 企業倒産は前年度と同数の43件となった。大規模な金融緩和政策が大きく寄与し、件数は前年度と並んで過去最少となった。業種別では、サービス業16件(同5件増)、建設業9件(同2件増)、卸売業7件(同1件増)などとなった。負債総額は122億3,200万円で同139.0%増となり、大型倒産(負債総額10億円以上)は1件増加、大口倒産(同1億円以上10億円未満)は8件増加となった。
 消費者物価(総合)は、被服及び履物などは下落したものの、光熱・水道や食料などが上昇したことから、前年度比0.7%上昇となった。
 広告収入(18年4月~19年2月累計)は、前年度同期比2.1%の減少となった。

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