Ryugin Research Institute Ltd.

調査レポート

2017年度の沖縄県経済の動向

(1)概況

 2017年度の県内景気は、観光関連は入域観光客が過去最高と好調に推移し、消費関連は堅調な食料品需要や新設店効果、外国人観光客の消費などから好調に推移した。建設関連は公共工事が増加したほか、民間工事も居住用、非居住用ともに増加し、概ね好調に推移した。全体では引き続き拡大の動きが強まって推移した。
 個人消費関連は、好調な動きとなった。百貨店・スーパー売上高は、外国人観光客の消費が好調なほか、スーパーの新設店効果や堅調な食料品需要などから前年度を上回った。耐久消費財では、新車販売台数は普通乗用車の好調や軽自動車の持ち直しなどから前年度を上回ったが、電気製品卸売販売額は太陽光発電システムの需要減少などから前年度を下回った。
 建設関連は、公共工事が沖縄振興予算は減少したが、国発注の基地関連工事などの増加により前年度を上回った。民間工事は、新設住宅着工が好調に推移し、非居住用は企業の設備投資増加などにより前年度を上回って推移したことから、建設全体では概ね好調に推移した。
 観光関連は、外国客の旺盛な旅行需要を背景に入域観光客数が増加し、好調に推移した。入域観光客数は、国内客、外国客ともに増加し、年度では957万人と前年度を大きく上回った。県内主要ホテルは、稼働率は前年度を下回ったものの、売上高、宿泊収入、客室単価はいずれも前年度を上回った。主要観光施設入場者数は前年度を上回り、ゴルフ場入場者数も前年度を上回った。

(2)消費関連

個人消費は、好調に推移した。
 百貨店売上高は、婦人服や食料品売上などは減少したものの、外国人観光客の増加などで化粧品を含む雑貨の売上が伸びたことから1.9%増と前年度を上回った。スーパー売上高(既存店ベース)は、食料品は精肉のほか、夏は盛夏商材、冬は鍋物商材が伸長したことなどから増加、衣料品はセール効果や気温の影響で夏物や冬物の動きが良かったことなどから増加、住居関連は家電や化粧品売上が伸長したことなどから増加し、全体では同1.7%増と前年度を上回った。全店ベースでも、新設店効果などから同2.8%増と前年度を上回った。
 耐久消費財では、新車販売台数は、小型乗用車は減少したものの、普通乗用車が自家用車需要の伸びで好調なことや、軽自動車が軽自動車税引き上げ(2015年4月)以降の鈍さから持ち直していることなどから、同0.1%増と前年度を上回った。電気製品卸売販売額は、エアコンやBDレコーダーなどは伸長したものの、太陽光発電システムの需要減少などから同1.9%減と前年度を下回った。

(3)建設関連

 建設関連は、公共工事が国発注の基地関連工事などの増加から前年度を上回った。民間工事は、分譲住宅などの新設住宅着工が好調で前年度を上回り、非居住用は企業の設備投資の増加などにより前年度を上回ったことから、全体では概ね好調に推移した。
 公共工事請負金額は、沖縄振興予算が前年度より減少となり、県や市町村発注の工事は減少したが、沖縄防衛局発注の基地関連工事や、那覇空港関連工事も引き続きみられたことから、前年度比12.8%増となった。発注者別にみると、国は前年度を上回ったが、県、市町村、独立行政法人等・その他は下回った。
 建築着工床面積は、居住用、非居住用ともに前年度を上回り、同7.7%増となった。特に、非居住用は大型商業施設やホテルなどの着工が相次ぎ、前年度を大幅に上回った。新設住宅着工戸数は、分譲住宅や給与住宅が前年度を上回り、全体では同3.0%増となった。住宅着工は好調であり、戸数は1万6,985戸と高水準で推移した。
 建築受注額は、高水準で推移しており、公共工事は減少したが、民間工事は増加したことから同5.2%増となった。
 建設資材関連では、公共工事向け出荷が好調なことから、セメントは同13.1%増となり、生コンは同7.8%増とともに前年度を上回った。また、ホテル建設などの民間工事が活発なことから、鋼材は同19.9%増となり、木材は同5.6%増とともに前年度を上回った。

(4)観光関連

 観光関連は、海外航空路線の拡充やクルーズ船寄港回数の増加などから入域観光客数が増加し、好調に推移した。
 入域観光客数は、前年度比9.2%増の957万9,000人となり、初の900万人台となり5年連続で過去最高を更新した。国内客は、同3.7%増の688万7,000人となった。外国客は、旺盛な旅行需要を背景に、同26.4%増の269万2,000人となった。県内主要ホテルは、稼働率は80.4%と同0.7%ポイント低下した。売上高は同0.1%増となり、宿泊収入、宿泊単価も前年を上回った。那覇市内ホテルは、稼働率は同0.3%ポイント上昇した。売上高は前年を下回り、宿泊収入、客室単価は前年を上回った。リゾートホテルは、稼働率は同1.3%ポイント低下した。売上高、宿泊収入、客室単価はいずれも前年を上回った。主要観光施設入場者数は同2.9%増となった。ゴルフ場入場者数は、県外客の増加に加え、県内客も増加に転じたことから、同2.9%増となった。

(5)その他

 雇用情勢をみると、就業者数は、漁業、複合サービス業などで減少したものの、卸売業、小売業などで増加し、失業率(速報値)は3.7%と前年度比0.5%ポイントの改善となった。新規求人数は同6.3%の増加となり、有効求人倍率も1.13倍と前年度(1.00倍)を上回った。
 企業倒産は前年度比4件減の43件となった。景気の拡大が大きく寄与したことや、中小企業金融円滑化法などの金融支援効果が持続したことから、建設業を中心に減少傾向となり、件数は過去最少を更新した。業種別では、サービス業11件(同3件減)、小売業8件(同1件増)、建設業7件(同3件減)などとなった。負債総額は51億1,800万円で、大型倒産は前年度と同件数、大口倒産は1件増加し、前年度と同額で最小となった。
 消費者物価(総合)は、住居などは下落したものの光熱水道や食料などの上昇により、前年度比0.8%上昇した。
 広告収入(17年4月~18年2月累計)は、前年度同期比0.2%の減少となった。

 

以上

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